【重要なお知らせ:当社を装った偽サイトにご注意ください】

気候・環境

2025.02.08 09:00

クリーンエネルギーの要、リチウムイオン電池は「クリーン」ではない

Jan Woitas/picture alliance via Getty Images

Jan Woitas/picture alliance via Getty Images

リチウムイオン電池はクリーンエネルギー転換の要だ。電気自動車に電力を供給するほか、スマートフォンからイヤフォンまで、私たちが日常的に使う電子機器にも広く使われている。リチウムイオン電池に蓄電することで、太陽が照っていなくても、風が吹いていなくても、私たちは太陽光発電や風力発電を利用することができる。リチウムイオン電池の需要は向こう10年間で飛躍的に伸びると予想されている。

ところが残念なことに、リチウムイオン電池自体は「クリーン」とは言えない。この種の電池に使われるリチウムやコバルトの採掘によって引き起こされる環境問題が取り沙汰されているが、それを別にしても、リチウムイオン電池は有害な化学物質を用いて製造されており、私たちの環境や健康にまで影響を及ぼしているのだ。

最も懸念される化学物質として挙げられるのは、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物だ。これら有機フッ素化合物(PFAS)は、環境中での残留性が極めて高いことから「永遠の化学物質」とも呼ばれる。PFASは、がんや生殖機能の低下、内分泌かく乱、免疫系や発育への悪影響など、深刻な健康問題を引き起こす可能性がある。(訳注:PFASには1万種類以上の物質があるとされているが、)新たなPFASの中には、当初は安全だとされていたものが、後に健康に害を及ぼすことが判明したものもある。

それにもかかわらず、PFASはリチウムイオン電池の電解液やバインダー、セパレーターとして使用されている。PFASは、製造や使用、廃棄やリサイクルの過程で電池から溶出することもある。実際、米国のテキサス工科大学とデューク大学の研究者が最近発表した査読付き論文では、リチウムイオン電池に使用されているPFASが大気汚染と水質汚濁の原因となっていることが示された。

また、電池の周囲を覆うプラスチックに有害な難燃剤が使用されていることも問題になっている。リチウムイオン電池には極めて高い火災の危険性があるため、それを低減するために難燃性規格が適用されている。これらの規格の多くは難燃剤の使用を必須としているわけではないが、通常、燃焼性試験の基準を満たすための最も安価で簡単な方法が難燃剤なのだ。ところが、難燃剤の添加による防火上の有効性は実証されていないのが現状だ。難燃性プラスチックが高エネルギーのリチウムイオン電池による火災を止めたり弱めたりすることはあまり期待できず、むしろ火災の有毒性や危険性を高めることがある。
次ページ > 難燃剤はリサイクルされたプラスチック製のスプーンにも

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事