キャリアを最優先して、がむしゃらに働くことをよしとするハッスルカルチャーは、野望を抱く現代人の特徴だ。多くのプロフェッショナルにとって、目標をひたすら追い求めることは美徳であり、そのために個人のウェルビーイングを犠牲にすることも少なくない。
パーパス(人生の目標)に従っているのであれば、がむしゃらに働くことは、イノベーションや進歩へと突き進む強力な原動力になり得るだろう。しかし、どんなツールでもそうだが、使い方を間違えたり使いすぎたりすれば逆効果になる。燃え尽きたり、得られる成果が損なわれたりする事態につながりかねない。
「意図的に生きることの大切さ」について、著書やポッドキャストなどで説いている
メーガン・ミラーは、「
Detoxing Off The Drug Of Achievement(成功というドラッグを無毒化する)」と題した洞察に富むTEDxの講演で、ハッスルカルチャーは持続可能ではないと語った。
ミラーは、生産性を最大化することが成功のカギだと信じ、食事の時間を惜しんで、ストリングチーズ(紐状に裂けるチーズ)とプロテインバーだけで15年間も生き抜いてきたという体験談を紹介した。しかし、そのせいで身体的にも精神的にもすっかり消耗してしまったという。
ミラーのこの体験談からは、忙しいことと成功を一体化するという大きな傾向が浮かび上がってくる。筆者自身も、ミラーの話に共感できる。学生時代は大きなプレッシャーがのしかかり、冷凍スナックHot Pocketsのハムチーズ味で日々食いつないでいた。そうやって時間を節約すれば、課題を遅れることなく提出できるからと、もっともらしい理由をつけていた。
しかし、いま思えば、筆者ががむしゃらにがんばっていたのは、効率性のためだけではない。必死になることで、心の奥深くにある自信のなさや力量不足への不安を押し殺していたのだ。