健康意識の高まりや、正しい医学情報に接する機会が増えたこともあり、多くの人が理に適った行動をとるようになったようだ。それでも、風邪の症状が長引くことがある。風邪を引いてからの対策も重要だが、じつは、普段からの体調管理が大きな違いをもたらす。この調査を監修した立川パークスクリニック院長の久住英二先生は、「いざというときの免疫力を発揮するには、体内のところどころで起こっている慢性炎症を日ごろから抑えておくことが鍵です」と話す。
慢性炎症とは、加齢、運動不足、喫煙、ストレスなどさまざまな原因で発生し長期間続く低レベルの炎症のこと。炎症は、免疫システムが異物を攻撃する際の防衛反応で、「炎症性サイトカイン」というたんぱく質がその制御を担う。ところが、慢性炎症があると免疫システムが常にフル稼働状態となり、いざ風邪やインフルエンザやコロナといったウイルスが体内に侵入したときに素早く対応できなくなる。さらに、免疫システムが暴走して炎症性サイトカインを大量放出してしまう「サイトカインストーム」が発生すると、症状が重症化する。
だからこそ、普段から健全な生活を送ることが大切となるのだが、なかでも重要なのが「腸」だと久住先生は指摘する。「腸は免疫の70パーセント以上を担う重要な器官で、小腸に存在する『パイエル板』は免疫細胞が活発に働く拠点です」ということだ。腸内環境を整えておけば、重症化リスクは下げられる。
そこで頼りになるのが「タウリン」だ。イカ、タコ、カキなどの魚介類に豊富に含まれるタウリンは、損傷した腸管バリア機能を改善して微細炎症を抑え、免疫低下時のパイエル板の減少を抑制する。特定の腸内細菌叢を増加させて腸内細菌叢の構成を調整する働きもある。さらに、タウリンは胆汁酸と結合して病理性細菌の増殖を抑える二次胆汁酸を生成するほか、疲労やサイトカインストームの抑制効果もある。