この星雲は、その形状から「ギター星雲(The Guitar Nebula)」と名づけられている。新たに公開された画像と動画は、NASAのチャンドラX線観測衛星とハッブル宇宙望遠鏡が集めたデータから作成されたもので、恒星が重力崩壊して超新星爆発を起こした名残であるパルサーと呼ばれる天体から粒子が放出される様子を捉えている。
ハッブル宇宙望遠鏡は1990年に、チャンドラX線観測衛星は1999年にそれぞれ打ち上げられた。いずれも宇宙の長期観測に貢献しており、時間経過による天体の変化を追跡する機会を天文学者にもたらしている。ギター星雲は、ここ20年ほど注目に値する変化を続けている。
NASAの動画からは、チャンドラのX線望遠鏡が2000~2021年に観測した「ギターのヘッド」部分で起きている活動が見てとれる。
ギターの全体的な形状はぼんやりとしているが、丸みを帯びたボディからヘッドの先まで、本物さながらの輪郭をたどることができる。ヘッド部分に位置するパルサーは「PSR B2224+65」と命名されている。パルサーは回転する中性子星で、放射線を規則的に放出する。この現象を、NASAは灯台の光になぞらえている。
NASAは11月20日付の発表で「チャンドラのX線画像は、パルサー(明るい白い点)から約2光年、12兆マイル(約19兆キロ)の長さにわたってエネルギー物質と反物質粒子のフィラメントが放出されていることを示している」と説明した。「ギターを形づくっているのは、パルサーから絶え間なく放出される粒子によって吹き飛ばされた『磁場の泡』だ」
チャンドラのX線望遠鏡がパルサーの活動を捉えたことで、ギターから「火」が噴き出している様子が確認できた。まさにロックスターの趣だ。
異なる専門分野をもつ宇宙望遠鏡を組み合わせて用いることで、天体の解明が前進する事例は少なくない。ハッブル宇宙望遠鏡は、光学観測を通じて星雲の研究に貢献してきた。ハッブルの強力な可視光観測システムは深宇宙探査にも活用されている。
ハッブル宇宙望遠鏡が1994~2021年に観測したデータからは、パルサーとギターのヘッド部分でどのような運動が起きているかが明らかになった。「データを研究したところ、ギターの輪郭を形づくる水素星雲内で泡の形成を促す変動が、パルサーの右側に逃げる粒子の量の変化も制御しているとの結論に至った。これによりX線フィラメントが微妙に明るくなったり暗くなったりする変化が生じ、まるでギターの先端から火炎が放射されているかのような現象として表れている」とNASAは述べた。
チャンドラとハッブルの観測結果は、パルサーが星間空間とどのように相互作用しているかの解明につながるものだ。
火を噴くギターといえば、映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に登場して話題を呼んだが、実はまれにではあるものの、この世の中にも実在する。YouTubeには、火炎放射器付きのギターを演奏するミュージシャンの動画がいくつか投稿されている。こうしたミュージシャンたちと同じく、地球を遠く離れた星雲もまた、ロックスターの夢を奏でているのかもしれない。
(forbes.com 原文)