ロシア軍が西部クルスク州からウクライナ軍を排除すべく新たに始めた反攻は、当初から
血なまぐさく混沌としたものになっている。およそ650平方kmの突出部の北西周縁を中心に激戦が繰り広げられているこの攻勢について、現地で戦闘に参加しているウクライナ軍ドローン(無人機)操縦士のKriegsforscher(クリークスフォルシャー)は、7日から12日までの6日間でロシア側は装甲車両少なくとも77両を失ったと
報告している。
77両というのはロシア軍で3個大隊分に相当する。Kriegsforscherによるとこれは「目に見え、映像で確認された」ものだけなので、実際の損失はもっと多いかもしれない。
ウクライナ軍参謀本部は12日、ウクライナとロシアの一部におよぶ約1300kmの戦線全体でロシア軍の1日の人的損害が過去最多の1950人にのぼったと
発表している。戦車や歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車などの装甲車両の損害も104両に達した。
損害はクルスク州で偏って多く出ているとみられる。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)によると、クルスク州でのロシア軍の攻撃はほかの方面よりも2〜3倍激しいとされる。CDSは「ロシア軍はクルスク州で高い攻撃頻度を維持し、10〜15分間隔で攻撃を仕掛けている」と
解説している。
ロシア軍は第51親衛空挺連隊や第810独立親衛海軍歩兵旅団など、数個の連隊や旅団を新しい車両や北朝鮮から派遣された兵士で補強したうえで、7日にクルスク州で新たな攻勢に出た。
OSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのアンドルー・パーペチュアは、ロシアは現在、できるだけ多く領土を獲得・奪還しようと前のめりになっているとの
見方を示し、その理由を4つ挙げている。「第一に、ロシアは戦争に必要なリソースが不足してきている。第二に、ロシアの経済はクソである。第三に、ロシアはウクライナは脆弱になっていると判断している。第四に、ロシアは米国はすっかり“不能”になったとみている」