どの国もその時の時代背景から影響力を行使すべく、戦略として言語供給を行っているようだ。
では、日本はどうか。高度経済成長を経て、1972年に設立された「国際交流基金」の地道な活動が代表的なものだろう。25カ国に26の施設をもち、日本語教師の派遣や日本語教育の支援を行っている。また、2013年に5年間で1000人の日本とアフリカの橋渡しとなるビジネス人材の育成を目指した「ABEイニシアチブ」がある。ただ、こちらは英語による授業のため、日本語能力は求められていない。
他国の政策と比較すると、規模の小ささは否めない。施設が多ければいいというものではないが、日本以外に住む外国人は、日本語教育にアクセスしたくてもなかなか難しいのだ。
では、需要量はどうだろうか。
実は日本はOECD諸国でもっとも外国人就業者数が増えている。2012年から10年間で3倍以上の増加だ。もともと少なかったという事情と、日本が極度の労働者不足であること、大学や大学院をでた高度な専門職人材の就職が増えていること、他国が外国人の就労に制限をかけているのに比べて就労ビザを取得しやすいこと、といった事情がある。
そして、外国人就業者数が増えている、あるいはこれからも増える可能性がある背景には、実は「定住希望」というニーズもある。
これには正確な統計はない。が、外国人材の採用を行う複数の事業者に話を聞くと、孔子学院で中国語の学習者が増えているにもかかわらず、「中国に定住したい」という人は少ない。逆に、「日本定住」を希望する人はアジアを中心に多い。事業者たちは、「おそらく世界一、住みたいと思われている肌感覚がある」とビジネスチャンスを窺う。特に、中国の富裕層は政治的な締め付けから中国を脱出したい人が目立ち、治安の良さを理由に日本に住みたがる人は多いという。
つまり、就職から定住まで高い人気を誇るのに、海外で日本語学習に接する機会が少ない。日本語の世界的な需給バランスは悪いのである。
そこで、話を「たけし日本語学校」に戻してみよう。