地球に似た惑星では、生命の発生はほとんどの場合起きるか、滅多に起きないかのどちらかのはずだと、研究チームは論文の中で主張している。宇宙生物学的に言えば宇宙は非常に過密状態か、非常に過疎状態かのどちらかであり、これらの中間の状態にあるとするのは不自然で、確率的に低いと考えられると、研究チームは結論付けている。
これは、地球外知的生命体探査(SETI)の推進派にとっては驚くべき情報だろう。
生態系では庭園にせよ銀河にせよ、個体数がある初期値(例えばゼロ)から、単位時間当たりの平均の生まれる個体数と死ぬ数が等しくなる平衡定常状態まで変化すると研究チームは指摘する。この平衡点は、単位時間当たりに誕生する割合と死滅する割合、および生態系自体の環境収容力(継続的に存在できる生物の最大量)の関数となるという。
論文の筆頭執筆者で、米コロンビア大学の教授とクールワールド研究所の所長を務めるデイビッド・キッピングは取材に応じた電子メールで、今回の研究では、宇宙における生命の問題に統計学の古典的な研究結果を適用していると説明している。そうすると、結果がイエスかノーの二択となる実験を繰り返し行う場合、実験に関する事前の情報がまったくなければ、ほぼすべての実験でイエスか、ほぼすべてでノーの結果が得られると予想するのが自然だということになる。
逆に、中間的な、まちまちの結果を得ると考える明白な理由がないと、キッピングは指摘する。キッピングによると、この考え方を最初に示したのは、20世紀の確率論を構築したエドウィン・ジェインズで、その理論の基礎を築いたのが20世紀の生化学者J・B・S・ホールデンだ。
たとえそうであっても、SETI推進派の多くはコペルニクスの原理(平凡の原理)を持ち出して、地球以外の宇宙のどこかに生命が多数存在すると主張していると、研究チームは指摘する。
けれども、基本的に条件が同じであることから判断すると、基本的に結果は同じと予想するのが自然だというのが、ホールデンの考え方だと、論文の共同執筆者で、オーストラリア・シドニー大学の教授(天体物理学)を務めるゲラント・ルイスは、取材に応じた電子メールで説明している。もし生命が存在する可能性が高いとすれば、至る所にいるはずであり、もしくは希少だとすると、どこにもいないことになるだろうと、ルイスは続けている。
例えばもし惑星系全体の半数に技術文明が存在し、半数には存在しないとしたら、それは奇妙なことだろうとルイスは指摘する。これは、惑星系の性質のわずかな違いによって、技術文明の発生する可能性が大幅に変わることを意味すると、ルイスは続ける。
従って、地球外知的生命体が存在する見込みは、ほとんどないように思われるのだ。