国内

2024.10.25 13:30

社会問題のR&Dも担うNPO新時代の存在意義

渡部:こども食堂の活動のような地域コミュニティの力を再度、強めていくような活動が、さらに広がっていくのではないでしょうか。こうした活動が地域社会のウェルビーイングの総量を増やしていく。課題解決型の「Do-ing」的な活動とともに、土壌を耕し裾野を広げることで、固定観念を変えたり、社会みんなのイシューにしていく「Be-ing」的な活動も大事ですから。

小沼:先日、米国に行ってきて面白いなと思ったのが「(問題解決における測定できる価値の)評価」に対する疲れがあった点です。ゆえに、コミュニティベースで、個々のNPOが実現したいことを長期視点で応援するためのお金が集まり始める流れがありました。地域のつながり、社会関係資本に対して資金が集まる流れは、この点とも符合しています。今後10年の日本社会のなかで、漢方薬側にお金が流れるのは大事になると思っています。

渡部:そして、3点目が「マルチセクターでの協働のデザインとリード」です。行政、企業、地域コミュニティとの適切な協力関係をデザインし、協働をリードしていく役割です。NPOが得意なのは、自分たちだけでなく、行政、企業、地域コミュニティをはじめ、さまざまな人たちを巻き込み、協力関係を築き、コラボレーションしながら、社会問題解決を行うことではないか、と。NPOやソーシャルセクターで働く人たちはいろいろな橋渡しを行ってきた「社会の触媒のプロフェッショナル」でもありますから。

小沼:新公益連盟では現在、経済同友会、インパクトスタートアップ協会と「共助資本主義の実現に向けた連携協定」を結び、協働を開始しています。今後はこの協働をさらに進化させていきたい。とはいえ、経済界のためにNPOが存在しているわけではありません。環境や人権分野をはじめ、企業活動をけん制する「ウォッチ・ドッグ(番犬)」としての役割も重要。それは政府・行政に対しても同様です。

渡部:誰もが聞いて納得する「わかりやすい」社会課題の解決だけがNPOの向き合い先ではありません。まだ社会には認識されていない痛みやしんどさ、残したいつながりなどもあります。解決方法まで見出せていなくても、その存在のことを現場で知っている数多くのNPOがあります。多様性や多元性を尊重しながら、より良い社会をつくろうと議論できる場に新公益連盟がなれればと思います。

李:市民社会が多元的であるからこそ、新公益連盟も多元的であるべき。みんな「より良い社会」にしたいし、誰かを幸せにしたい、何かを達成したいわけですから、できるだけみんなの「願い」をもとにつながれないか、と思っています。

小沼大地◎クロスフィールズ代表理事・共同創業者。青年海外協力隊として中東シリアで活動した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて勤務。2011年5月、ビジネスパーソンが新興国で社会課題解決にあたる「留職」をはじめとした活動を展開するクロスフィールズを創業。著書『働く意義の見つけ方』(ダイヤモンド社)。

小沼大地◎クロスフィールズ代表理事・共同創業者。青年海外協力隊として中東シリアで活動した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて勤務。2011年5月、ビジネスパーソンが新興国で社会課題解決にあたる「留職」をはじめとした活動を展開するクロスフィールズを創業。著書『働く意義の見つけ方』(ダイヤモンド社)。

文=山本智之 写真=小田駿一 イラストレーション=ジャコモ・バグナラ

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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