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2024.10.21 14:15

旅館DXの旗手、元湯陣屋4代目女将が「週休3日」でV字回復できた理由

宿泊代以外の大きな売り上げの柱に


 ──いわゆるERP、経営や業務管理のシステムを外注せず、独自に旅館バージョンを作ったということですか。

はい、自社で開発しました。現在はライセンス販売をしており、全国450施設で利用してもらっています。

──陣屋コネクト開発後、業績はどうなりましたか。

2009年の売上が2億9000万円くらいで、2014年ぐらいからグーッと伸びました。その主軸になっているのが実は「陣屋コネクト」で、売り上げの半分近くが「陣屋コネクト」です。

事業承継した直後、全部が手書きの台帳でした。この台帳をデジタル化していきたい、というのはすぐに感じました。顧客管理や食材仕入れ、原価管理、こうした必要な情報を、ちゃんと数値化して管理していかなければいけない。食材ロスを減らしたいというのもありました。

2009年10月に陣屋に入り、その2カ月後にはエンジニアを採用し、そこからセールスフォースの導入を決めました。

──わずかな期間で導入を決定したのはなぜですか?

今はクラウドという言葉は当たり前ですけど、当時はクラウド自体、一般にはほとんど知られていませんでした。私も最初は何だろうと思いました。ネット上で全部、サーバーを持たないでできるということで、じゃあそれだねって。

実際に導入したのは2010年の4月で、すぐに社内で使い始めました。2012年には、会社を設立し、外販も始めました。すぐに成果が目に見えるように出始め、2年半で赤字が解消しています。

外販に取り組んだのは、社内で改善要望があまり上がりにくくなっていたという事情もありました。「外販をして厳しい意見をたくさんもらい、もっと仕組みを進化させたい」と思ったのです。


休館日を導入し、週休3日へ

──DX化によって経営再建したことに加え、休館日というのを導入していますが、どういう意図でしょうか?
 
休みたかったという一言だけなんです(笑)。独自のシステム「陣屋コネクト」によって、2年半ぐらいで赤字から黒字に転換しました。マイナス6000万円からスタートしたので、高額の賃金を出すことが長くできませんでした。
 
では、それ以外に従業員に還元できるものはないかな、と思った時に「休み」に目を付けました。
 
──今は週休3日ですよね。
 
今は火水木を休館としています。デジタル改革によって、さまざまな部分で生産性が上がっており、休館日を作る前と比較しても、ほぼ同レベルの宿泊の売上をキープしています。
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