事業成長と大事にしたい文化の両立
白神:事業の成長性や成長スピードに関しては、悩ましい問題です。コツコツ広がってはいるものの、いわゆる爆発的な成長はまだできていません。去年やっと単年黒字になりました。赤字の時は家業で生まれた利益を入れたり、自分の給料を下げてきたんです。
山田:エクイティの調達はされていないですよね?
白神:していません。
エクイティを入れると、投資家が求めるIRR(内部収益率)を達成することと、職人さんを大事にするという文化の両立が難しくなると思っているからです。エクイティを入れるやり方も、入れないやり方も両方正解だと思いますが、うちの場合は結果的にやっていません。ですが、事業フェーズも考えて、今後は入れることもあると思います。
その点で、アトツギの良さがやっぱりありました。いわゆるシリーズAや、PMF(プロダクト マーケット フィット)に入るまでは家業のお金を使うことができます。その部分はやっぱりアトツギであることをうまく使わせていただいたので、本当に運が良かったと思います。
藤田:エクイティも含めて、今後の事業の展望を教えてください。
白神:規模を大きくするかどうか、これまで悩んだこともありました。ですが、やっぱり規模を大きくしていかないと業界に一石を投じる事業にならないと思ったんです。
自分が儲かる・儲からないではなく、事業を大きくしていく中でエクイティは絶対にある話だと思います。
その上で、上場するかは分かりませんが、上場基準ぐらいには行きたいです。上場してしまうと、短期的な投資家からすれば職人さんを使い倒すことでもっと儲かると思われてしまう。本当に自分がしたいこととのバランスがあると思いますね。
教えて瀬戸内VC 道なき道を歩む時の心構え
白神:道なき道を歩むために意識していることを教えてください。
山田さんも藤田さんも、誰もしないことをずっとやってきた人たちだと思うので、その時にどんな心構えで、何を考えてやってるのかを聞きたいです。
藤田:僕の答えは「10年後の差分を考える」です。道なき道を歩むことは、儲からないから誰もやってこなかったことでもあると思います。短期的な経済合理性から離れているところにあるので、皆やらなかったから道がない。
自分を奮い立たせるためには、「自分がこの道を歩んだときの10年後と、自分が歩まなかったときの10年後の差分がどうなのか?」「10年後に藤田がやってよかったよねって言ってもらえるかどうか」を考えます。
山田:そういう道にしか興味を持てないというのが、正直な気持ちです。子ども時代も一緒だと思いますが、何か草原があって、そこに行ったらどうなるんだろうと行ってみるのと変わらない。どっちかといえばその感覚に戻っていっている感じです。
自分の本当の興味関心や、やったことがなく知らないことにひたすら手を出していった結果、今は誰もやってないと言われてるようなことが興味関心のど真ん中にきているだけな気がします。
家業のアトツギとして匠の技を目の当たりにし、業界に一石を投じるためにスタートアップとして新規事業を立ち上げる。そんな挑戦の背景には、コツコツと真面目に頑張る人が適切に評価されるようになってほしいという思いと会社のビジョンがあった。伝統を受け継ぎながらも、革新を追求する姿勢が、未来のビジネスを切り拓くきっかけになるのだろう。
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