ベストセラー『世界と私のAtoZ』『#Z世代的価値観』(ともに講談社)の著者であり、BE:FIRSTへの取材と楽曲の共同制作をした竹田ダニエルが考えるこれからの「世界を変える」とは。
私がZ世代を語る際には、最初に「Z世代を語るには、まずはZ世代が育った社会的背景を理解する必要がある」と話している。「今、何がはやっているのか」という瞬間的な事象だけを切り取って、「これから何がはやるのか」を予測することは今や不可能だ。社会と個人が必然的に密接につながり、個人の選択によって未来がいくらでも変化する時代だからこそ、トレンドやヒットは「過去の成功」を形式的に模倣するだけでは成り立たない。成功の背景にある過程を脚色することなく、リアルを発信し、受け入れることが、今の時代に求められている。
インターネットによって常に誰とでもつながることができ、どんな情報にもアクセスできる。しかしその便利さの裏には、あらゆるストーリーも「コンテンツ」として表層的に消費され、瞬間的に利益を上げないものは価値がないものだと資本主義的に切り捨てられてしまう。SNSのプラットフォームのアルゴリズムの変化ひとつで社会情勢も変わり、インターネットとの接し方によって世代の価値観も大きく変わる。そしてインターネットとリアルの狭間が曖昧になっていくほど、「本当のリアル」を求める声は強まっていく。
生まれたときから気候変動、不安定な経済、そして資本主義の限界を知ってしまっているZ世代は、日本でもアメリカでも「不安と絶望を抱えている」という点では共通している。嘘のない現実の厳しさを知っているからこそ逃避を求める傾向も見られるが、同時に「嘘」を見抜く力も強い。
自分が変わると世界が変わる
7人組ダンス&ボーカルグループ・BE:FIRSTを例にとっても、それがよくわかる。成功ストーリー、人間的なリアル、そして「世界を変える」という歌詞の強さが彼らの武器であり、その強い言葉と人情物語が日本で受け入れられていることを見ると、業界やリスナーの「変化」が目に見えて感じられる。かたちばかり楽しませてくれるような「嘘」は、裏が見透かされてしまう世の中ではどんどん必要とされなくなっているのだ。BE:FIRSTが日本中をとりこにし、あらゆる属性の人を中毒的にハマらせていく過程を観察することで、見えることが多くある。メンバー7人のように好きなことに熱中したり、先行きが不透明で莫大な不安があるなかで「夢」というものを一生懸命追ったり、頑なに変わることがなかった世界を変えたいと宣言したりと、そういう「野望」をもつこと自体が日本社会に衝撃をもたらしているのではないだろうか。健康的な関係で仲間と切磋琢磨して世界を変えたい。日本の狭苦しい当たり前をぶっ壊したい。その行動力と成功の軌跡に対して、リスナーやファンは爽快感や快感を得ているし、変化が求められていたこともその反響は浮き彫りにする。彼らの快進撃を分析することで、日本社会が悩まされてきた「絶望」と、今必要としている「希望」を垣間見ることができるのだ。