EVは環境にやさしい車なので、自治体が運営している駐車場では50パーセントの割引、ソウル市内のトンネル使用料に関しては無料、EVを購入する時の補助金もあるなど、政治的配慮も多い。
だが、この8月、韓国の第2の都市、仁川で発生したベンツEVの火災事故に続き、相次いでEVの火災事故が起きたことで、EVに関して消費者は不安を募らせている。
それだけでなく、EVの急発進事故も発生した。これはEVのワンペダルの操作ミスが疑われており、まさにEVにとって「泣きっ面に蜂」といった形である。
火災事故の原因はバッテリー
EVの火災リスクは、主にリチウムイオンバッテリーに起因する。リチウムイオンバッテリーは高エネルギー密度を持ち、効率的なエネルギー供給を可能にする一方で、外部の衝撃や温度変化に敏感で、異常な状況下では過熱や発火のリスクが高まる。仁川でおきたEVの火災事故の後、すぐに政府は国務総理主宰で「国政懸案関係長官会議」を開き、「対策として電気自動車を販売するメーカーは、バッテリーの主要情報を公開することを義務化する」と発表した。
仁川で発生したEVの火災事故車に搭載されていたバッテリーは、中国のパラシスバッテリーであることが判明した。「なぜ高級車ベンツに安物の中国産バッテリーが搭載されている?」という疑問と、中国産に対する不安感が同時に起こった。
韓国の自動車大手である「現代自動車」は、新しいEV「キャスパEV」や「EV3」の発売を控えており、EVの火災事故による消費者の不安をかき消すために連日のように「安全技術」を発信した。
すると、韓国産バッテリーを搭載したEVの販売は増え、中国産バッテリーを搭載しているEVの販売は急激に減った。
だが、引き続き起こったEVの火災事故の車のバッテリーは韓国産であったため、人々はEVに対するフォビア(恐怖症)さえ起こしている。
数年前、BMWの自動車が火災事故を立て続けに起こして、その時、危険だということで地下の駐車場に止められなかったことがあった。今回の仁川でのEV火災もアパートの地下駐車場で起こったため、地下駐車場にEVを止めようとすると、住民から抗議されるという。
業界によると、韓国のEV市場はキャズム(大衆化直前の一時的需要鈍化)に火災フォビアまで重なり、昨年上半期は前年に比べ約14パーセント増加していたEV販売量は、今年の上半期には減少となっていたが、今後はさらにEV市場は悪化すると見られている。