ウクライナ軍には、ポクロウシク正面に送り込める予備部隊があまりない。1カ月前に予備として温存していた旅団の多くは現在、ロシア西部クルスク州への侵攻作戦に参加している。
ウクライナの指導部はここへきてようやく、ポクロウシク正面での戦力バランスが危機的な状態であることを理解し始めたようだ。ボロディミル・ゼレンスキー大統領は28日、ポクロウシク正面などの「状況はきわめて厳しい」と認めた。
来るポクロウシク攻防戦は、2月中旬にウクライナ側の撤退で終わったアウジーウカ攻防戦の延長として位置づけることができる。2022年2月の戦争拡大前に約6万人が暮らしていた(現在はその多くが避難している)ポクロウシクから東へ40kmほどのアウジーウカ市は、その西にある村や市、鉄道道路などを守る要塞だった。
弾薬が枯渇するなかでウクライナ軍のアウジーウカ守備隊が撤退に追い込まれると、廃墟と化している同市の西にある兵站インフラはロシア軍の攻撃にさらされることになった。弾薬が枯渇したのは、米議会でロシアに好都合な共和党議員らが何カ月もの間、米国の対ウクライナ追加援助を妨害したことの直接の帰結だった。
ロシア軍によるアウジーウカ西方への攻撃は、きわめて大きな損害を出している。だがロシア側は、ポクロウシクでの勝利に向けて何千、何万の命や、何百の装甲車両という代償を払うのをいとわない姿勢だ。それにはもっともな理由もある。
ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは28日のリポートで、ポクロウシクは「複数の鉄道路線の非常に重要な結節点」であり、鉄道などの輸送のハブとして、ドネツク州中南部のブフレダルから州北部、それ以遠におよぶ広範な前線でウクライナ軍の補給を支えていると解説している。