だが、その人気や太陽をイメージさせる外観や栄養豊富で健康に良い食品であるという利点の一方で、バナナは先行き不透明な状況に直面している。
季節に関わらずいつでも買えるこのフルーツは、桃やプラムなどが夏の到来を告げるように、旬の季節が訪れるたびに消費者にありがたみを感じさせるものではない。だが、バナナの生産者らに突きつけられている問題は、そうした販売の面における課題以上に深刻なものだ。
伝統的な方法で栽培される安価なバナナの背景には、農園労働者の低賃金と、劣悪な労働条件がある。米衣料品ブランドのバナナ・リパブリックが誕生するよりもずっと昔、この言葉が指していたのは、果物を取り扱う多国籍企業が生産国の経済と政府をいかに支配していたか、そうした力の集中により、どのような恐ろしい状況がもたらされていたかということだ。
そして、そのバナナは現在でも、社会経済的な影響が大きい。国連食糧農業機関(FAO)の推計によると、バナナの生産量で上位に入る国では、小規模農園の毎月の世帯収入の約4分の3は、(安価な)バナナに支えられている。
バナナの栽培には、持続可能性の面での問題もある。(単一の作物を栽培する)モノカルチャーの大規模農園はグランドカバーになる植物が植えられておらず、土壌の劣化が進み、大半は化学肥料や農薬に頼らざるを得ない。それは、周辺地域の水路だけでなく、人々の健康も危機にさらすことになる。
そして、バナナにはもう1つ、その生態に関連した大きな問題がある。株分けで増やすことができるバナナは、遺伝的にはすべて親株と同一ということになる。
だが、自然界において、生物多様性はその生物にとっての保護に等しい。つまり、現在の主流であるキャベンディッシュ種もまた、真菌による病気で壊滅的な被害を受けたグロスミシェル種と同じ弱点を持ち、生産者に同じ脅威をもたらしているということだ。