記憶がどのように保存されるかを理解するには、まず記憶にはさまざまな種類があることを認識する必要がある。短期記憶は、脳が積極的に処理している情報を保持し、一方でワーキングメモリ(作業記憶)は、それらの情報をリアルタイムで操作することを可能にする。たとえば、ランダムな数字のリストを覚えるよう課題を与えられたとしよう。少しの間を空けた後、平均的な人は5〜9個の数字しか思い出せない。短期記憶には限られた記憶容量しかなく、情報を保持できるのは数秒から1分程度しかない。だが短期記憶の柔軟性のおかげで、私たちは電話番号をダイヤルするのに十分な時間覚えておけるといった目の前の仕事に注意を向けることができる。
一方、長期記憶は事実上無限だ。ここでは、私たちを形成する情報、スキル、経験が保存される。しかし、すべての思考や経験が長期的に保存されるわけではない。部屋に何かを探しに行ったのに、何を探していたのか忘れてしまったことはないだろうか? あるいは、紹介されたばかりの人の名前を忘れてしまったことは? 情報を短期記憶から長期記憶に移すには、能動的な符号化(エンコーディング)が必要であり、その間に情報は既存の記憶と結びつけられ、意味を与えられ、取り出しやすいように長期記憶に整理される。
記憶が符号化される際、活性化されたニューロンは化学信号を他のニューロンとのシナプスを通じて送信する。これにより、その記憶に関する情報を含むニューロンの相互接続ネットワークが形成される。記憶を繰り返し想起したり、反芻したりするにつれて、ネットワークは強化される。その情報に触れる機会が多いほど、記憶に残る可能性が高くなる。論文著者のサマヴァットらの研究では、同じ数のシナプスを含む並列神経ネットワークを活性化すると、一貫した強度の増加が生じることがわかった。脳には何兆ものシナプスが存在することを考えると、脳の記憶容量は当初考えられていたよりもはるかに大きい可能性がある。