しかし、テスラのエネルギー事業は同社にとって明るい話題であることが証明され、同部門の収益は前年比2倍の約30億ドル(約4661億円)に達した。テスラにとって長らく好不調の波が激しかった同事業における、成長の原動力とは何なのだろうか?
テスラのエネルギー事業
テスラのエネルギー事業は、蓄電製品の販売と最終顧客への太陽光発電システムの販売・設置を行っている。第2四半期、テスラは、同社が提供するバッテリーのMegapack(メガパック)と蓄電システムのPowerwall(パワーウォール)に対する需要が高かったことにより、蓄電システムの電力換算導入量が過去最高の9.4ギガワット時を記録したと発表した。メガパックは電力会社をターゲットとした大規模蓄電システムで、パワーウォールは家庭用の蓄電システムである。テスラはカリフォルニア州ラスロップにあるバッテリー製造施設で、パワーウォールの生産を強化している。同事業の収益性も改善している。第2四半期の売上総利益率は24.5%で、前年比で6ポイント以上の改善となった。これは、同四半期に18.5%を記録した自動車事業の売上総利益率をも上回っている。
風力発電や太陽光発電など、天候や時間帯によって発電量が変動する再生可能エネルギーの導入が進むにつれ、蓄電システムの需要は拡大する可能性が高い。テスラの蓄電システムは、消費量の少ない時間帯に発電された余剰エネルギーを蓄え、需要が発電量を上回ったときに放電することで、電源の間欠性を抑えることができる。これらのバッテリーパックがあれば、再生可能エネルギー発電所を安定した状態で稼働させることができる。テスラはまた、来年早々に稼働予定の上海の新工場における製造能力を強化する予定で、これにより同社の蓄電システムの生産量は3倍まで引き上がる可能性があると見られている。
とはいえ、テスラの自動車事業の規模が非常に大きいことや、自動運転ソフトウェアなどの他の事業もあることから、この事業だけによってテスラの長期的展望が変わるとは私たちも考えていない。エネルギー事業の収益は、第2四半期における総収益のわずか約12%に過ぎないのだ。さらに、テスラは、エネルギー事業は顧客の大規模設備投資のタイミングに左右されるなど大きな波があると指摘する。また、蓄電システムと太陽光発電の市場は非常に競争が激しく、一般的にコスト面で優位に立つ中国勢がこの分野で強い存在感を示している。自動車事業とは異なり、エネルギー事業はよりコモディティ化する可能性が高い。このため、長期的にはテスラがこの分野から得られるマージンが制限される可能性もある。
株価パフォーマンス
TSLAは2021年1月初旬につけた235ドルから現在の220ドル前後の水準まで、ほとんど値動きがない。過去3年間のTSLAのリターンは2021年に50%、2022年にマイナス65%、2023年に102%だった。これに対してS&P500種株価指数のリターンは、2021年に27%、2022年にマイナス19%、2023年に24%であり、TSLAのリターンは2022年にS&P500を下回っている。私たちはテスラの目標株価を約230ドルとしている。
(forbes.com原文)