新たな労働党政権の人工知能(AI)やサイバーセキュリティに関する計画は、テック業界から広く歓迎されている。国王の今回の演説は、AI関連の法案の早期の制定を約束する内容ではなかったが、政府は「最も強力なAIモデルを開発する者に対して適切な法的要件を確立するための立法を目指す」と述べている。
労働党は以前、「最も強力なAIモデル」を構築するAI企業に対して拘束力のある規制を導入すると述べていたが、その立法が具体的にどのようなものになるかは、まだ明らかになっていない。
「私たちは、政府が目指す法律が具体的にどのようなものになるのか、詳細が明らかになることを期待している。多くの専門家は、この分野に基本的なガードレールが存在しないことを懸念している」と、英国コンピュータ協会(BCS)のアダム・レオン・スミスはコメントした。
ソフトウェアコンサルティング会社ザーティスのAI戦略責任者であるミハル・シマックザクもこの懸念に同調し、「政府は過度な規制を避けるべきだ」と述べている。
「過度な規制は、コンプライアンスのコストを考慮に入れると、AIのイノベーションを抑え込む可能性がある。特に小規模なスタートアップに与える打撃は、大きなものになる」と彼は語り、労働党のアプローチは、イノベーションの育成と規制との間でバランスを取ろうとしているが、両立させるのは難しいと指摘した。
一方、今回の国王の演説では、2つの法案が発表された。「デジタル情報・スマートデータ法案(Digital Information and Smart Data Bill)」と「サイバーセキュリティ・レジリエンス法案(Cyber Security and Resilience Bill)」だ。
デジタル情報・スマートデータ法案は、経済の活性化を目的とした革新的なデータ利用を促進するもので、新たなデジタル認証サービスの創設や、顧客データを認可された外部のサービスプロバイダーと共有するためのシステムの構築が含まれている。
セキュリティ強化のための法案
サイバーセキュリティ・レジリエンス法案は、重要な国家インフラの保護を目的としたもので、この法案は、特に6月に国民保健サービス(NHS)の請負業者がランサムウェア攻撃を受け、複数の病院が手術や検査を中止したことを考慮すると重要だ。しかし、業界の一部の関係者は、過剰な規制について懸念を示している。「英国が持続的な経済成長を実現するためには、組織が過度に細かな要件に縛られないようにする必要がある」と、パロアルトネットワークスの英国・アイルランド政府担当シニアディレクター、カーラ・ベイカーは述べている。
この法案は、英国のサイバーセキュリティ法制に6年ぶりの変更をもたらすものだ。
「サイバー犯罪者の攻撃能力が急速に進化する中で、我々がどれほど遅れているかを想像してみてほしい」と、セキュリティ企業IDEEのCEOのアル・ラカニは述べている。「英国の長らく放置されてきたデジタルインフラが直面する継続的なリスクに対処するためには、追加の立法とリソースが必要だ」と彼は語った。
(forbes.com原文)