シンクタンクのフォーカスエコノミクスによると、世界経済は拡大を続けるが、2024年と2025年の予測は過去2年をわずかに下回るという。世界の鉱工業生産は、経済全体よりペースは遅いが伸びている(これはサービス業の増加という長期的傾向と一致している)。鉱工業生産のデータはオランダ経済政策分析局(CPB)が発表している『ワールドトレードモニター』のもので、製造業、鉱業、公益事業を合算している。
CPBによる集計では、最近の世界貿易は2022年のピークを約2%下回っている。海上輸送が全体のおおよそ80%を占め、残りはトラック、列車、パイプラインで運ばれた。
歴史的に、生産と貿易は密接に関連している。貿易は景気循環を増幅させる傾向にあることが知られている。つまり、貿易のピークは経済のピークよりも高く、貿易の不振は経済の不振よりも深刻だ。こうしたパターンは2008、2009年の景気後退期や新型コロナのパンデミック時にも見られた。だが、過去2年間はそうなっていない。
貿易は2000年代初めに鉱工業生産に比例して増え、2010年代には安定した。だが過去2年間は、貿易自体、そして鉱工業生産と比較しても低迷している。過去の関連性に基づくと、貿易は想定を約4%下回っているようだ。
考えられる理由は、リショアリングと脱グローバル化だ。リショアリングは、サプライチェーンに対する企業の懸念を反映している。パンデミック時には「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」の方式がいかに脆弱であるかが浮き彫りになった。商品需要の急増は港湾の処理能力を圧迫し、スエズ運河の閉鎖では実際の閉鎖期間よりも数カ月長く貨物の滞留が続いた。ロシアがウクライナに侵攻し、黒海を航行する船舶が危険にさらされ、ウクライナから欧州の工場への物資供給が混乱した。そして、特に中国をめぐる国際的な緊張の高まりにより、経営者らはリショア、ニアショア(地理的に近い国への回帰)、フレンドショア(友好国への回帰)のいずれかに向かうことになった。
ここ数年、各国の首脳らは国境を越えた経済の拡大にあまり魅力を感じなくなっている。関税は引き上げられ、新たな貿易取引に興味を示す首脳はいないようだ。
リショアリングと脱グローバル化は、最近のデータが示唆するよりも非常にゆっくり進んでいる可能性が高い。経営コンサルタントのサンディ・グッドウィンは「企業が生産を自国に戻すには、新しい設備や技術への投資、労働者の再教育、その他の大幅な業務変更が必要になるかもしれない。こうした一からの投資と、数十年にわたるスキルの低下や国内のサプライチェーンエコシステムの欠如が相まって、多くの企業は中国からの撤退が当初想定していたよりもはるかに困難であることに気づいた」と書いている。