9月の利下げ確率80%超
米労働省のデータによると、6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.0%上昇した。伸び率は市場予想(3.1%)を下回り、2023年6月(3%)以来の低さとなった。前月比では0.1%下落し、2020年5月以来のマイナスを記録した。市場予想は0.1%の上昇だった。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年同月比3.3%の上昇だった。市場では5月から横ばいの3.4%と見込まれており、わずかながら鈍化した。
米金利先物の値動きに基づくシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の「FedWatch」ツールによると、市場が9月17〜18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを見込む確率は11日、一時89%に跳ね上がった。その後約85%に下がったが、10日の73%、1カ月前の52%よりはかなり高くなっている。金利先物トレーダーの間では年内に複数回の利下げが行われるとの観測も強まっている。
金融政策の見通しの変化は債券市場にも反映された。米国債の利回りは1年物、2年物、10年物でいずれも0.1ポイント前後下がり(価格は上昇)、数カ月ぶりの低さとなった。債券トレーダーは、FRBの金融政策が今後数年で大幅に緩和されるとの確信を強めている。
ラッセル2000が急伸
一方、株式市場の反応は控えめだった。S&P500種株価指数は11日、前日比0.88%安で取引を終えた。過去にCPIの数字が良かった場合に比べると値動きははるかに緩やかだった。株式投資家がすでに利下げをかなり織り込んでいるためとみられる。ただ、AI(人工知能)フィーバーによる最近の株高の恩恵にあまり浴していなかった株式などはこの日、大きく値上がりした。中小型株で構成されるラッセル2000株価指数は前日比3.57%高と急伸した。
コメリカ・ウェルス・マネジメントのジョン・リンチ最高投資責任者(CIO)は「インフレの面でたいへん良いニュースだ」とコメントし、利下げは連邦債務の返済コストの低減や上場企業の相対的なバリエーションの上昇など、いくつかかの点で「重要な」ものになると説明した。
AIへの期待続く
インフレの高まりを受けてFRBは2022年3月に利上げを開始した。同年9月にS&P500種が年初来25%下落するなど、しばらくは株安が進んだが、その後、高金利は株安を長引かせるという通念は覆されて株高に転じた。投資家の間で、企業がAIなどの技術の進展を将来の収益につなげられるとの信頼が高まっていることなどが背景にある。政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現在5.25~5.5%と、およそ23年ぶりの高い水準にある。FRBが年内に2回利下げし、FF金利を4.75〜5%まで引き下げても、2007〜22年の水準に比べるとまだ高いことになる。
(forbes.com 原文)