おさらいしておこう。汗を大量にかくと水分が失われ、体内の塩分濃度が高まる。そこに大量に水だけを飲むと今度は塩分濃度が薄くなりすぎて、体はバランスをとるために水分を排出してしまう。結果として水分不足の状態で塩分濃度が適正となってしまう。十分な水分を体内に保持するには、水といっしょに塩分を摂ってバランスを保つ必要があるのだ。
カバヤ食品は、全国の20代から60代の男女1000人を対象に熱中症に関する調査を行った。それによると、発汗時にも意図的に塩分補給をしない人が約42パーセント、熱中症対策はできていると思っていても、熱中症の症状や対策の認識が間違っている人が約48パーセントにのぼった。なんと8割近い人たちが、屋外での発汗時に塩分補給ができていなかった。
スポーツや高温で大量の汗をかいたら、水分と塩分を補給すべきだと認識している人は78.1パーセントと好成績ながら、汗をかいてもとくに塩分補給をしない人が38.4パーセントだ。積極的に塩分補給をしない理由は、「水分補給さえしていれば十分だと思うから」、「塩分は食事から十分補給できているから」、「塩分不足になるほど汗をかいていると思わないから」、「塩分の適切な摂取量がわからないから」というものが多かった。なかには、塩分は体に悪い、医者に控えるよう言われている、かえって喉が渇くなど、むしろ塩分を嫌う傾向も見られる。
発汗時に塩分補給をする習慣がある人のなかには、スポーツドリンクや塩飴を利用する人が多いが、麦茶を飲むという人も少なくなかった。だが麦茶に含まれるミネラルは少なく十分ではないので注意したい。また、涼しい屋内で過ごす人は、屋外で働く人に比べて塩分補給を意識しない傾向があり、屋内で発汗するほど体を動かしたときの塩分不足のリスクは、むしろ屋内のほうが高くなることも考慮するべきだろう。
日本スポーツ協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)によると、熱中症予防のための暑さの指数「WBGT」が28以上31未満(気温が31度から35度未満)では、10〜20分おきに休憩をとり水分と塩分を補給することとしている。これは運動のための指針だが、日本生気象学会の指針ではWBGT28以上で、すべての生活行動で熱中症が起こる危険性があると指摘しているので、激しい運動をせずとも水分と塩分の補給が重要であることがわかる。
この調査を監修した帝京大学医学部の三宅康史教授によれば、500ミリリットル程度の汗をかいたとき、または食事を抜いたときは、500ミリリットルの水に塩ひとつまみ(0.5〜1グラム)をいっしょに摂るとよいと話している。ただし、高血圧、心臓病、肝臓病のある人は塩分補給をあまり意識せず、バランスのよい3度の食事でをしっかりとり、涼しい環境での生活を心がけるのが大切ということだ。
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