音楽

2024.07.10 14:15

フジロックは激動の時代とどう向き合っていくのか スマッシュ佐潟社長インタビュー

フェスは海外でも過度期になっていて、どこも大変そうです。開催が発表されたのちに、チケットが想定ほど売れずに中止となることも珍しくなくなっています。サブスクの隆盛でリスナーの趣味嗜好が多様化しているところもあり、昔みたいにレッ(ド・ホット)チリ(・ペッパーズ)が出演していたらお客さんが入る、という状況ではないですね。チケットも高くなっていますし。集客の工夫が必要なのは、世界中どこも一緒です。

フジロックのアイデンティティ

フジロックとしても、凝り固まってしまっている部分もあるので、レンジは少し拡げていかないといけないと思っています。

K-POPやアイドルといった路線ではないですが、例えば台湾とかインドネシアとかアジア各国のロックバンドを呼んでみるなど、アジアのロックシーンを紹介していくのはアリかもしれないなと。一昨年、グリーンステージに出演したインドのメタルバンドの「ブラッディウッド」はフェスで人気に火が点いて、その後の単独公演も集客に成功した事例となりました。
フェスをきっかけにそういう新たなマーケットを築いていくというのは弊社のビジネスとしても望ましい構造のひとつです。フジロックで今まで全く知らなかったバンドを見ると、いい音楽というのは欧米だけではなくて世界中にあるなというのを改めて認識するんですよ。

“フジロッカーズ”って呼ばれてるファンたちも、来始めた当初はまだ20代、30代だったのが、今40代、50代となり、子供を連れて来たりしているのを見ると、積み上げた年月はやはりすごいなと。下手したら親子3世代ということもあり、そこはサマソニやロッキンオンでは出しにくいカルチャーかもしれません。

出演バンドのファンをメインに集客をしていないところがフジロックにはあるんですよね。生活の一部にフェスがある、みたいな。7月最後の週末の3日間、生活する場所がたまたまフェスになるというか。昔、「3日券」しか売らないという年があってそれは失敗したんですけど(苦笑)、 でもこのカルチャーはやはりフジのアイデンティティなので大事にしていきたいと思っています。

一方で、若い層を増やしていかなければならず、年齢制限を設けた割引チケットなども用意していますが。今年はその売れ行きも好調ですが、そうして参加した人たちは、フジロックを好きになってくれる人と、もう来ないという人に別れるはずで、ファンで居続けてくれる人を増やしていきたいですね。
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文・ポートレート=山本憲資

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