ビジネス

2024.06.29 17:00

イタリア製皮革製品を「中国製」価格で供給する高級ブランドの下請け業者

イタリア・ミラノにあるクリスチャン・ディオールの店舗(Shutterstock)

業界のリーダーが主導するべき

残念なのは、大手高級ブランドが自らサプライチェーンを監督するために行動を起こすのではなく、司法制度が介入せざるを得ない状況になっていることだ。高級品業界のリーダーであるLVMHは、あらゆる企業の中でも、それができる力を持っている。
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ディオールはLVMHの中でルイ・ヴィトンに続いて二番目に大きなファッションブランドだ。その服飾および皮革製品部門は、昨年のLVMHの862億ユーロ(約15兆円)という総収益の半分近くをもたらした。

LVMHはESG(環境・社会・ガバナンス)の面においても高い評価を得ている。同社は2022年、非営利団体のCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)による環境影響評価で、1万5000社を超える企業の中からトリプルA認定を与えられたわずか12社のうちの1つとなった。

環境面の持続可能性目標に関する企業の透明性と実績でリーダーを自認するLVMHにとって、人権面における責任は確かにそれと同じくらい重要であるはずだ。

業界全体で高級ブランドの評判が危機に陥る

ISTUD(イタリアのビジネススクール)などの教授で高級品業界のコンサルタントを務めるアレッサンドロ・バロッシーニ・ボルペによると、高級ブランドの請負業者の間における非倫理的な商慣行は、長年にわたり公然の秘密であったという。
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「もちろん、噂は噂です。しかし、私が高級ファッション業界に入った30年ほど前から、そんな噂は広まっていました」と彼は話し、不健全な労働環境、過度の労働時間、相応の賃金が払われない不法就労者の噂に言及した。

「皮革製品のサプライチェーンでは、このような状況がより頻繁に報告されていましたが、衣料品のサプライチェーンでも珍しいことではありません」と彼は続けた。

今回の判決による潜在的な影響は、ディオールとLVMH全体の評判に大きな影響を与えると、バロッシーニ・ボルペは見ている。この判決が下される前には、LVMHの株価は1株あたり780ユーロ(約13万4000円)前後で取引されていたが、判決が報道された後には710ユーロ(約12万2000円)前後にまで落ち込んだ。

しかし、その影響はディオールやLVMHに留まらない可能性がある。「今回のことや同様の件が、高級ファッション業界全体の信用を傷つけるおそれがあります。多くのブランドが最近急激に値上げしたことに対する失望感の高まりと相まって、このニュースは顧客に、高級ブランドは上質な製品を提供すると信じることを、自然とやめさせるかもしれません」。

「すべての高級ファッションブランドが、集団的に非倫理的で持続可能ではない商行為に関わっているのではないかと疑念を抱かれるおそれがあります」と、バロッシーニ・ボルペは警告している。

「これは非常に厳しく修復が困難な打撃となるかもしれません。製品の有形で本質的な価値だけでなく、信頼や誠意といった無形の価値に対する疑問も意味するからです」。彼はそう結論付けた。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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