米国立がん研究所が今回行った研究では、年齢中央値61.5歳で、慢性疾患の既往歴がなく全般的に健康な39万人以上の被験者の健康記録を20年以上にわたって追跡した。一般的に、健康的な生活習慣を心掛けている人や疾患を持つ人はマルチビタミンを摂取する機会が多い傾向にあるため、研究ではこれを考慮に入れ、結果に影響を与えないようにした。
それによると、マルチビタミンを毎日摂取していた参加者は、大卒の割合がやや高く、毎日摂取していなかった群より肥満の指標となる体格指数(BMI)が低く、睡眠の質も高かった。他方で、マルチビタミンを毎日摂取している人は、がんや心臓病のほか、脳卒中や動脈瘤(りゅう)などの脳血管疾患による死亡率に差はなかったものの、すべての死因による死亡率が4%高いことも判明した。
研究者らは、食品から栄養を摂取することで、サプリメントでは得られない死亡率改善効果が得られる可能性があると説明。野菜、果物、豆類、穀類は、長寿が顕著な地域の主要な食品だと述べた。さらに、今回の研究の対象者は一般的に健康な成人に限られていたため、栄養欠乏症のような他のグループを対象に含めることや、マルチビタミンの定期的な摂取が加齢に伴う健康状態に与え得る影響を評価するために、さらなる研究を行う必要があると指摘した。
マルチビタミンに健康効果があるという証拠はあるのか?
米国では19歳以上の成人の31%超がマルチビタミンを摂取しているが、同サプリメントの効果についてはこれまで長い間議論の的となってきた。JAMAに過去に掲載された研究では、マルチビタミンを毎日摂取している男性はがんの発症率が8%低く、白内障の発症率も低い傾向があることが明らかになった。マルチビタミンが高齢者の記憶力を改善することも、複数の研究からわかっている。マルチビタミンは気分障害のある人にも効果がある。医学誌「人間精神薬理学」に発表された研究では、8週間にわたってマルチビタミンを摂取した高齢男性のグループが、偽薬(プラセボ)を投与した群と比較して、抑うつ症状や不安症状が有意に減少したことが示された。