とはいえ、ホンダの重荷となっているであろう問題がいくつかある。来年度のホンダの成長は鈍化しそうだ。自動車販売台数は、コロナ禍の反動による需要急増が和らぎ、中国とヨーロッパでの販売が減少することから、わずか2%増にとどまりそうだ。さらに、為替が円高方向に動く可能性も踏まえ、同社が発表した来期の業績予想では、売上高は約0.6%減の20兆3000億円となる見通しだ。ただし、営業利益は微増に留まる。
投資家はまた、ホンダの長期的な見通しを懸念しているようだ。ホンダは電気自動車(EV)の分野では遅れをとっており、EVが販売台数に占める割合は非常に小さいが、同社はカナダのEV工場への110億ドル(約1兆7500億円)規模の投資や、米オハイオ州での改革など、新たなコミットメントを発表しEV戦略を急激に加速している。研究開発費は22%増の1兆1900億円、設備投資は前年比70%増の6700億円を見込んでいる。
しかし、このホンダによるEV戦略の加速は、EV市場全体が冷え込み、各自動車メーカーもEVへの投資を減速している時に行われることになる。例えば、フォードは約120億ドル(約1兆9000億円)規模のEV投資を遅らせるとしている。需要が冷え込んでいる時期にEVへの巨額な投資を行うことは、当面の収益性を圧迫する可能性が高い。さらに、現地メーカーが覇権を握りつつある中国市場でホンダが競争できるかどうかも未知数だ。EVを含む中国製自動車は世界的に受け入れられつつあり、中国は今年、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国になる見通しだ。これはホンダのような企業にとって脅威となる可能性がある。
ホンダの米国市場における株価はほとんど変化しておらず、2021年1月初旬の30ドル台から現在の31ドル前後の水準までわずかに動いている程度だ。対して、S&P500種株価指数は同期間に約45%の上昇を見せている。
しかし、ホンダは決して割高な水準ではなく、株価は2025年度の予想利益の約7.5倍で取引されている。私たちは、同社の妥当なバリュエーション、自社株買いについての積極的な計画およびハイブリッド自動車分野での利益の可能性などを株価のプラス材料と見ている。そのような背景を踏まえ、私たちはホンダの目標株価を、現在の市場価格より約20%高い38ドルとしている。
(forbes.com原文)