この売りの背景にはいくつかの要因がある。ディズニーのストリーミング事業は、加入者数の伸びの鈍化と競争の激化に直面している。リニアTV事業も、広告の減少や国内市場でのアフィリエイト収入の減少により、このところ業績が低迷している。テーマパーク事業はパンデミック後の再開以来、堅調に推移しているが、同社は今後コストの増加と入場者数の正常化を見込んでおり、短期的な見通しは混迷しているようだ。
株価パフォーマンス
DISは2023年10月に約80ドルの安値で取引されていたが、2024年3月期第2四半期の業績が市場予想を上回ったことや、ストリーミング事業の営業利益も予想以上に好調だったことなどが追い風となり、株価は多少回復している。もう少し長い期間で見ると、DISは2021年1月上旬の180ドル台から現在の100ドル前後の水準まで、45%下落した。特筆すべきは、DISが過去3年間いずれも市場全体をアンダーパフォームしていることである。2021年のリターンはマイナス15%、2022年はマイナス44%、2023年は4%であった。一方、S&P500種株価指数のリターンは2021年に27%、2022年にマイナス19%、2023年に24%であり、DISのパフォーマンスはすべての年でS&P500を下回っている。
インフレショック前の高値回復なるか
もしDISが2021年の高値水準まで回復するとすれば、投資家はかなりのリターンを上げられることになる。約99%の株価上昇だ。DISを上昇させる要因はいくつかある。ディズニーは、さまざまなサービスを束ね、コストを下げ、パスワード共有を取り締まる計画に取り組むことで、ストリーミング事業の収益性を高めることにますます注力している。また、新作アニメ映画『インサイド・ヘッド2』の大ヒットにより、ディズニーの映画事業も復活を遂げつつある。しかし、現時点での私たちのDISの目標株価は、現在の市場価格より約35%高い、137ドル程度と推定している。DISは割安ではあるが、混迷する経済や消費者心理の悪化により、目先の上昇幅は限定され、インフレショック前の高値への回復には時間がかかると私たちは考える。
直近のファンダメンタルズ
ディズニーの売上高は、2020年の約650億ドル(約10兆3000億円)から、直近では約890億ドル(約14兆円)に増加した。これは、同社のテーマパーク事業において、コロナ禍の悪影響が緩和されたことで入場者数と平均支出が回復したためである。また、ストリーミング事業における売上高の増加も、全体の売上高の成長に貢献した。同社は2020年に約29億ドル(約4620億円)の純損失を計上したが、これはコロナ禍においてテーマパーク事業が苦戦したためである。(forbes.com原文)