バイオ

2024.09.08 13:00

現存する「最後の野生馬のゲノム」が解読される

現在、モウコノウマの分類は依然として議論の対象となっており、独立種なのか、家畜ウマや絶滅したターパンと同じノウマの亜種なのか、あるいは家畜ウマの亜種個体群なのかについて、コンセンサスは得られていない。

ミネソタ動物園にいる10歳の雌ウマ、バルシュカがゲノム解析に貢献した(Minnesota Zoo)

ゲノム解析に貢献したミネソタ動物園にいる10歳の雌ウマ、バルシュカ(Minnesota Zoo)

モウコノウマのゲノムは最新テクノロジーによって解明された

モウコノウマの遺伝子地図を作るために使用された血液サンプルは、ミネソタ動物園に住む10歳の飼育下の雌ウマから提供された。同動物園は長年、モウコノウマの繁殖と管理を積極的に行っており、1970年代以来50頭以上の子馬を誕生させ、1992年に開始されたモンゴル・ホスタイ国立公園における再導入活動にも雄ウマを提供した。他にも中国、ハンガリー、カザフスタンおよびロシアでも群れの再導入が行われてきた。

ゲノムとは何か? それを研究することで何を学べるのだろうか?

「ゲノムは動物の基本設計図であり、何がその種をユニークなものにしているのかだけでなく、集団の健康状態についても教えてくれます」と本研究の上級著者でミネソタ大学食品農業天然資源科学部准教授の分子生物学者クリストファー・フォークはいう。フォークは進化ゲノム学、分子遺伝学およびバイオインフォマティクスの専門家だ。

「学生たちは協力して、世界で最も高品質のモウコノウマのゲノムを分析しました」とフォークは付け加えた。モウコノウマのゲノム配列の解読に寄与した学生たちは、フォークが担当する動物科学コースに在籍していた。

フォーク教授と共同研究者らは、Oxford Nanopore社製の最新技術を用いたポケットサイズの装置を使ってモウコノウマの完全ゲノムを再構築した。その小型デバイスは、DNA塩基配列決定に使用されている巨大な機器とほぼ同じ機能をもち、能力もほぼ同等だ。

私見だが、おそらくナノテクノロジーの最も興味深い側面はその移植性であり、研究結果は遠隔地にいる野生のモウコノウマ(あるいは他のあらゆる動物)のさらなる研究に応用することができる。
Oxford Nanopore Technologies社のポータブル測定機器「MinION」(Oxford Nanopore Technologies)

Oxford Nanopore Technologies社のポータブル測定機器「MinION」(Oxford Nanopore Technologies)

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翻訳=高橋信夫

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