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VC

2024.06.26 09:15

ベンチャーキャピタルを年300社輩出 「VC量産アクセラ」の内側

提供=VC Lab

米国では活発な、初期のスタートアップへの資金提供やノウハウの共有を行うアクセラレータープログラムが日本でも増えてきました。一方で、ベンチャーキャピタル(VC)のアクセラレーターは見受けません。教育プログラムも存在はしますが、それもわずかです。
 
スタートアップ向けアクセラレーターの一つ、ファウンダー・インスティテュート(世界数十カ国に展開し、Udemyなどを輩出)創業者アデオ・レッシ氏は、2020年に、シリコンバレーでVC向けアクセラレーター「VCラボ」を始めました。
 
4年足らずで479社(2024年4月時点)のVCを輩出、すでに年300社に迫る勢いです。プログラムの改良とVC支援の方法論やソフトウェアの開発に取り組み、VC創出から運営・成長をサポートするデサイル・グループ(Decile Group)として活動しています。
 
デサイル・グループは、

・AIを使いキャピタリストを支援するソフトウェア・ツール
・バックオフィスなどの支援をするサービス
・VCラボ内の少数の選ばれたVCに投資するファンド「デサイル・キャピタル」

などを揃え、アクセラレーター卒業後の長期的なサポートを提供する体制をつくりました。
 
2025年までに1000社以上のVC発足を支援する見込みです。日本のVCファンド組成数は1年で145(2022年の日本ベンチャーキャピタル協会調べ、既存VCを含む)、米国のVCファンド組成数は1年で数百〜千程度(2022年1340、2023年474、ピッチブック調べ)という報告もあり、この数字が全てを捕捉できていないとしても、VCラボのインパクトの大きさがわかります。

スタートアップ成功者らが参加、倍率は10倍

レッシ氏は、まずVC起業での課題について「VCを始めたいというニーズはあるが、参入障壁が高い」と指摘します。VCは特殊な事業のためノウハウが重要であり、適切な相談相手が必要です。わかりやすい例では、VCを始めるにはお金がかかりますが、どの法律・会計事務所等に相談すればよいか分からず、間違った選択をすると費用と時間がさらにかかります。VCラボはそれを解決するプラットフォームだといいます。
 
VCラボの参加者は、創業したスタートアップの株を売却した起業家や幹部、エンジェル投資家、著名企業のエグゼクティブ、VCから独立する人など。スタートアップで何年も働いた人や業界知識が豊富な人が多く、またバイオサイエンスの博士などディープテックの専門家で、それを投資に活かそうとする人もいます。米国外66%、女性29%で、チームでなく一人でのVC発足を目指す場合が61%。多くが、初回のファンド規模は300〜1000万ドル(約5億円〜15億円)を目指しています。
 
2024年5月現在、第15期を募集中ですが、一つの期に対して2500〜3000の応募があります。そのうち参加が許されるのは1割ほど。経歴・経験、投資家とのネットワーク、投資戦略などを評価します。そして、卒業するのは50〜80程度で、優れた20〜30社に有料サポートプログラムのオファーが届きます。そのなかでも有望な2〜3社にデサイル・キャピタルが投資します。

ファンドクローズまでを支援

プログラムは16週間にわたって行われますが、その間にお金集めが軌道に乗らないと脱落し、見込みのあるチームはよりサポートが得られるという厳しい仕組みです。「単なる教育ではなく、クロージングの実践プログラムです」とヘッド・オブ・ファーム・サクセスのパブロ・ヴィダル氏は語ります。
 
以下は、実際にVCラボ参加者の資金調達事例です。
 
例1:トップクラスのテクノロジー企業で経験を積んだ移民の男性は、移民によるスタートアップに特化したVCを志し、1000万ドルの運用額を目指したところ、2300万ドルがすぐ集まりました。
 
例2:マーケティング企業のエグゼクティブの女性は、女性起業家と女性向け製品・サービスにフォーカスしたVCを志し、300万ドルを募集したところ、500万ドルに届く勢いとのこと。
 
プログラムの改良やサポートの充実化でファンド組成のクロージング期間は、グラフのように短縮できました。第3期では13カ月かかったのが、第12期は5カ月と、プログラム終了からすぐにクローズできるようになりました。
 


出所:VCラボ
 
では、期間短縮に役立った一つの施策を紹介しましょう。
 
レッシ氏はVCに投資する投資家(LP)との契約書をシンプル化・標準化したコーナーストーンという雛形を提唱しています。
 
VCファンドを組成する初期費用として、法務に10〜12万ドル、期間としては数カ月かかります。それを大幅に圧縮し、デサイル・パートナーが5万ドル、4週間で完了してくれます(費用の9割はファンドのお金が入ってからの後払い)。この手法が適用できるのは、米国、カナダ、ドバイの3カ国に限られ、例えば欧州では数倍の法務コストがかかります。したがって、日本人がVCラボに応募し、選ばれても、日本でファンド組成する場合は、こうしたサポートは得られません。

なお、VCラボが支援したVCのうち、63%が米国にVCを登記し、約40%が主に米国のスタートアップに投資しています。
 
また、デサイル・グループは、「センターオブエクセレンス」という専門家メンター・コミュニティを形成しており、例えば個別の投資案件や長期的にVCを発展させる経営などについて助言を得ることもできます。
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文=本荘修二 編集=露原直人

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