なかでも面白いのは、「韓国石油」という銘柄だ。この会社は、アスファルトをはじめ石油工業製品をつくるメーカーであり、石油・ガスの採掘とは関連性がないのに、社名に「石油」と付いているだけで株価が急騰した。
実際、今回の深海ガス田プロジェクトを推進する韓国石油公社は非上場会社であり、株が急騰した韓国石油は、この会社とは何の関連性もなかった。
6月12日に開示された韓国の金融監督院の開示システムによれば、個人投資家らが血迷って韓国ガス公社をはじめ、石油・ガス関連株の値を暴騰させている間に、同社の役員4名は、保有していた株を売ったとしている。彼らは尹大統領の発表直後の5日と7日の2回に分けて売り払っている。
石油埋蔵評価会社にも疑惑が噴出
そんななか、前述したように、アクトジオ社のビトール・アブレウ博士が6月5日に来韓し、7日に記者懇談会を開いた。しかし巷では、アブレウ博士の信頼性についての疑惑も噴出している。アクトジオ社のウェブページにアクセスできないとか、本社の住所が米国ヒューストンにある一般家庭になっているという話もあった。
ビジネスソーシャルメディアの「リンクトイン」によると、アクトジオ社は社員が2名から10名の小規模な会社で、アブレウ博士もアクトジオ社に2015年8月から昨年11月までコンサルタントとして勤務した後、退社していると表記されている。
この疑惑に関して、韓国石油公社は「アクトジオ社は2016年に設立され、南米のガイアナ、ボリビア、ブラジル、ミャンマー、カザフスタンなどで、多数のプロジェクト評価を行い、アブレウ博士を中心に専門家がプロジェクト単位でコラボするかたちをとっている」と説明した。
そして、アブレウ博士については、米国最大の石油メジャーであるエクソンモービル社で地質グループ長を歴任し、深海鉱区評価を主導した30年キャリアを持つエキスパートであると説明した。
それでも、まだまだ疑惑は残った。アクトジオ社が営業税を滞納していたため、法人資格がはく奪された状態だったという事実も明るみに出て、滞納していた税金を韓国石油公社が立て替えたのではないかという指摘もあり、これについて国政監査をすべきだという声も上がった。
これに関して、韓国石油公社は「アクトジオ社が滞納していた税額は200万ウォン(約20万円)という少額であり、錯誤によって発生した」とし、「韓国石油公社が立て替える前にアクトジオ社は自社で納税した」と説明した。
このようにアクトジオ社に関する疑惑は募るばかりで、結局、アブレウ博士が記者懇談会した後、石油関連株は一斉に下落した。
この一連の出来事は、まだ試錐にも入っていない状態では何とも結論しようがないが、与党と野党で意見は真っ二つに割れている。
与党は「産油国となる希望を語っているのに、野党が冷や水を浴びせている」とし、野党は「資源開発詐欺」「産油国だなんて、詐欺まがいのことを言っている」「希望詐欺」「弾劾あるのみ」などと、与党の言い分を真っ向から否定している。
与党と野党がこのような「口喧嘩」している間に、韓国政府の産業部は「東海深海油田探査開発」のプロジェクト名「大王くじら」と命名し、韓国石油公社は今年12月から深海に試錐孔をあける作業に入るための準備を進めているという。
ちなみに、「大王くじら」は日本名を「シロナガスくじら」(Blue Whale)、いままで知られているなかで最大の哺乳動物を指す。それだけプロジェクトに大きな期待をかけていることを反映している。