2024.06.19 15:00

世界で広がる観光の「変動料金制」、観光立国アイスランドでも

アイスランドのスコガフォス滝(Abinieks / Shutterstock.com)

ここ数年、観光立国アイスランドの集客力を損なうものは何もなかった。新型コロナも乗り越えた(パンデミックによって一時的に停滞したものの、観光客数はパンデミック前の水準に回復した)。火山の噴火の脅威も影響していない(昨年11月にアイスランド気象庁が近く噴火が起こる可能性を警告したときでさえ、インバウンド客はパンデミック前と同じ水準だった)。

アイスランド銀行によると、昨年同国を訪れた観光客は人口のおよそ6倍の約220万人だった。観光収入は、年間輸出額の3分の1に相当する5980億アイスランド・クローナ(約6790億円)だった。2023年のGDPに占める観光業の割合は8.5%で、パンデミック前を上回っていることがアイスランド統計局のデータで示されている。

だが、歓迎すべき経済効果とは裏腹に、時にそうした観光客が弊害を生むこともある。スペインのセビリアやオランダのアムステルダム、クロアチアのドブロブニクなど、観光客に人気の欧州の都市が続々と対策を講じているように、アイスランドもオーバーツーリズムを抑制しようと観光税を課している。ホテル宿泊客から600クローナ(約680円)徴収し、持続可能な取り組みを進める資金の財源にあてている。

だが今、アイスランドはそうした観光客に課す税を微調整しようとしているようだ。同国のビャルニ・ベネディクトソン首相はこのほどCNBCの取材に対し、「将来の観光部門を支える税のあり方を検討している」と語った。「観光地を訪れる人が税を払う方向で進めるつもりだ。国内各地にある観光地への入場料を徴収したいと考えている」

さらに、ベネディクソンは変動料金制について言及した。「料金を変動制にすることで、訪れる観光客数をコントロールすることができるかもしれない。つまり、需要のピーク時には高い入場料を徴収する。1日の中で観光客の多い時間帯、あるいは混み合う時期に料金を上げることでコントロールすることができると考えている」と説明した。

需要が高いときに料金を上げる変動料金制は、イタリアのベネチアに倣ったものだ。ベネチアはすでに、時期や宿泊施設の場所、タイプ、分類に応じて、1泊につき1人あたり1~5ユーロ(約170〜850円)のささやかなホテル税を課している。加えて、4月25日から7月14日までの間、日帰りの観光客に5ユーロの入場料を課す制度を今春導入した。

このような税は観光客からの搾取だと批判する声がある一方、関係者は、混雑していない時間帯や時期に訪れるよう観光客に促すことで、混雑を分散させ、観光をより持続可能なものにするという意図だと主張している。

旅行関連での変動料金制は今に始まったものではない。航空運賃やホテルの宿泊料金、ウーバーの乗車料金には随分前から組み込まれている。だが最近では、需要に応じて変動する価格設定が食事や観光、さらには英国のパブでの飲食にも密かに広がっている。

航空会社は料金を課す新たな方法さえ生み出している。米格安航空会社のJetBlue(ジェットブルー)は3月から預け荷物の料金に変動制を適用している。ピーク時にベーシックエコノミー席を利用する場合、1個目の預け荷物は片道最大5ドル(約790円)、2個目の預け荷物は10ドル(約1580円)かかる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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