起業家

2024.06.10 08:00

「ボール型カクテル」で623億円を手にした女性起業家の創業ストーリー

(C)buzzballz

バズボールズは、初年度こそ赤字だったが2年目には100万ドル(約1億5000万円)の売上をあげて、10万ドル(約1500万円)の黒字になった。そして3年目にキックは、借金を完済して教師の仕事を辞めた。
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その後、大きな転機が訪れたのは2012年に、ラスベガスで開催された業界のトレードショーに参加したときのことだった。大学が春休み中だった長男のアレックスとともに、テキサスから車を走らせた彼女は、2000ドル(約31万円)で借りた会場のブースで自身のカクテルを売り込んだ。その努力は実を結び、1日で15の州のブローカーと販売代理店契約を結んだ。

創業9年で売上1億ドル

キックはその後も努力を続け、大手の酒類メーカーが流通の販売の大半を占める業界で、徐々に会社の知名度を高めていった。そして、2014年までに、ウォルマートやセブンイレブン、サークルK、ウォルグリーンなどの食料品店やコンビニでの販売は2桁の伸びを記録した。

事業は順調に拡大を続け、2016年にはバズボールズの年間収益は2000万ドル(約31億円)に達した。キックが考案したカクテルは、スポーツアリーナやスピリット航空などの航空会社でもトップセラーとなった。2019年には、売上が1億ドル(約156億円)を突破した。

「私の最大の目標は、自分のビジネスを立ち上げて、息子たちに大学卒業後にお金を稼ぐ機会を与えることでした」とキックは話す。彼女はまた、会社の株式と引き換えに外部から資金調達をしようとは、一切思わなかったとも述べている。
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ブランドが成長するにつれ、キックは、カクテルの容器であるプラスチック製のボールの製造を自社で行う必要があると判断し、生産拠点を中国から移転した。バズボールズが本社を置くテキサス州カロルトンの会社の敷地内には現在、その製造工場が置かれている。

キックは長年、自分のビジネスの一角を欲しがる投資家たちを拒絶してきたが、最終的には売却したいと考えるようになった。「私のカクテルをさらに市場に浸透させるための方法を知っていて、私には無い法的裏付けと力があり、さらに多くの従業員を配備して、流通を手助けしてくれるような相手がいいなと思っていました」

キックは3年前に、バズボールズの売却を試みたが、その際に400以上のブランドを所有する大手のサゼラックは、価格が高すぎると判断して拒否したという。しかし、今年になって両社は再び交渉を行い、取引に合意した。

バズボールズが次の成長段階へと進む中、キックは同社の社長と副社長を務める2人の息子とともに引き続き会社の舵取りを行う予定だ。さらに、かつては離婚を考えた夫のティムとも、その後は和解し、今では同社の最高財務責任者(CFO)を任せている。4人全員が今後4年間の雇用契約をサゼラックと締結した。

キックは今、ブランドが永続的に成長すると確信している。昨年、約700万ケースを販売したバズボールズは、2025年の売上を倍に伸ばす計画という。

「私は自分が立ち上げた会社が嫌になったから、あるいは辞めたかったから売却したのではありません。飛躍的な成長のために売却したのです。このビジネスには本当に伸びしろがあるのです」と彼女は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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