一方で、職場であれ、病院であれ、あるいは友人同士であれ、更年期に関して沈黙していたり恥の感覚を持っていたりすることは、居心地の悪さや羞恥心、自信の低下につながる場合も多い。
職場において、更年期や加齢にまつわるスティグマ(負のイメージ)が存在することは明らかだ。今は、誰もが見て見ぬふりという状態だが、存在する問題を直視し、きちんと対応すべきなのだ。
さらに、この問題に取り組むべきなのは、更年期を経験している女性だけというわけではない。企業のシニアリーダーたちは、すべての従業員にとって、「自分は理解されている」「自分は支えられている」と感じられる職場づくりに努めることができる。
データで話をしよう。米国には45歳から60歳の働く女性が1500万人以上いる。これは、労働力全体のおよそ30%に相当する。そして、更年期は通常、45歳から55歳で始まり、7年ほど続く。更年期の症状は、「気分にムラがある」といった微妙なものから、「ホットフラッシュ(突然のほてりやのぼせ、発汗)」などのわかりやすい症状まで、さまざまだ。また、メイヨー・クリニックの医師ジュリアナ・クリングの指摘によれば、黒人女性とヒスパニック系女性の方が、更年期障害の症状が重くなりがちだという。
しかし、更年期の女性が抱える最大の悩みはエイジズム(年齢差別)だ。この問題が、働く更年期女性の前に立ちはだかるハードルを高くしている。2023年9月に発表された、職場における更年期に関するリポートによると、「年齢による差別を受けたことがある」と回答した人はほぼ半数に上った。
人は、更年期と加齢を結びつけがちだ。そのせいで、自分たちが加齢に対して持つ負のイメージを、更年期にある女性メンバーに投影してしまうのかもしれない。だから、更年期の女性の多くは、症状を明かすのを躊躇してしまう。「ヒステリー」「役に立たない」「厄介な人」というレッテルを貼られることが怖いのだ。