ドイツのミュンヘンを拠点とするヘルシングは、ゼネラル・カタリストが主導するシリーズCラウンドで、少なくとも4億ドル(約627億円)を調達する計画だと、事情に詳しい4人の関係者が述べている。同社は、今から1年足らず前にも同じくゼネラル・カタリストの主導で2億ドル(約314億円)以上を調達しており、今回のラウンドで累計調達額は7億5000万ドル(約1179億円)を突破する。
急成長する防衛テックのエコシステムに巨額な投資が集まる中、今回の資金調達はこの分野で事業を展開する欧州企業への投資としては過去最大となる。ベンチャーキャピタル(VC)各社は、中東やウクライナでの戦争や米中間の緊張の高まりの中で、西側諸国の防衛を強化する企業への投資を積極化させている。ピッチブックによると、過去5年間における防衛テクノロジー分野への投資は1000億ドル(約15兆7000億円)にものぼる。
2021年に設立されたヘルシングは、欧州の投資家から約200万ドル(約3億円)のシード資金を集めて始動し、同年11月のシリーズAでスポティファイ創業者のダニエル・エクが設立した投資会社から1億ドル(約157億円)以上を調達した。
ヘルシングのチームは、自社のプロダクトについての説明を避けている。しかし、同社は米国のユニコーンであるAnduril(アンドゥリル)のような兵器に特化した企業とは異なり、軍のAIキャパシティを支えるソフトウェア・スイートの構築に注力している模様だ。
ヘルシングは昨年、スウェーデンのSaab(サーブ)とともに、ユーロファイター戦闘機のパイロットを支援するAIツールをドイツ軍に提供する契約を獲得し、その数カ月後にはフランスやドイツ、スペインの多国間協定で新型戦闘機を開発するFuture Combat Air System(未来戦闘航空システム)にAI機能を提供するベンダーとして選ばれた。そして今年2月に同社は、ウクライナ軍にドローン向けのAI機能を提供する契約を獲得した。
ヘルシングの最大の株主であるゼネラル・カタリストは、アンドゥリルやApplied Intuition(アプライドイトゥイション)などの初期投資家としても知られ、防衛テック分野で頭角を現している。また、ベテラン投資家のポール・クワンが率いるグローバル・レジリエンスも、セコイアやアンドリーセン・ホロウィッツといった他の大手VCとともに、この分野の企業を後押ししている。
クワンは、ヘルシングの前回ラウンドを発表する際のブログで、「各国の防衛支出にソフトウェアが占める割合は今後の10年間で1桁台から2桁台に成長する。この分野の企業は、各国の政府にとってゲームチェンジャーになるはずだ」と述べていた。
(forbes.com 原文)