英王立がん研究基金は、同国では今年、2万800件の皮膚がん患者が発生すると予測しており、うち90%は予防可能な症例だとしている。罹患率はすべての年齢層で上昇しているが、特に増加が著しいのは高齢者で、過去10年間で80歳以上の罹患率は57%も上昇した。25~49歳の若年層では、同時期の増加率は7%程度と少ない。
他の多くのがんと同様、高齢者は若年者よりメラノーマを発症する率が高い傾向にある。だが、年齢以外にも複数の要因がありそうだ。
高齢化が進む英国では現在、高齢者の数が増えているだけでなく、総人口に占める高齢者の割合も拡大している。国勢調査の資料によると、英国では2011~21年の間に80歳以上の高齢者の数が約290万人から330万人に増加した。実に14.85%の増加だ。一方、25~49歳の人口は比較的停滞しており、同期間の増加率はわずか0.19%(4万2100人)にとどまった。
皮膚がんの増加が高齢者に偏っている要因として、行動様式の変化も挙げられる。現在の高齢者の数十年前の理解より、現代の若者は紫外線の危険性をよく認識しているため、日光から身を守る傾向が強いと考えられる。現代の高齢者が1960年代に日差しの強い旅行先で休暇を楽しんでいた頃は、現代の若者と同じような日焼け対策をしていなかったのではないだろうか。
メラノーマの最大の原因の1つは、太陽からの紫外線や日焼けサロンで使われる人工的な紫外線だ。つまり日焼け自体が重大な危険因子なのだ。英王立がん研究基金は、2年に1度でも日焼けをすると、皮膚がんを発症する確率が3倍になると説明している。
メラノーマは誰にでも発症するが、特に肌や髪の色が明るい人やほくろの多い人などは発症しやすい。メラノーマの多くは日焼け止めを十分に使用し、日差しが強い時には日光に当たらないようにし、日焼けサロンを利用しないことで予防することができる。外に出て日光にさらされる場合、紫外線防御効果(SPF)30以上の日焼け止めを十分に塗り、定期的に塗り直すことが推奨されている。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国で最も一般的ながんは皮膚がんだ。皮膚がんの治療法はここ数十年で大幅に進歩したため、英国では患者数が増加しているにもかかわらず、この病気で死亡する人は減少した。
英王立がん研究基金のミシェル・ミッチェル最高経営責任者(CEO)は、研究の成果によりメラノーマを含む皮膚がんの生存率は伸び続けているとしながらも、「そもそも病気になるリスクを減らす努力が不可欠だ」と警鐘を鳴らした。研究者らは常に新たな治療法の開発に取り組んでいる。英国では最近、皮膚がんを対象にした世界初の個別化ワクチンの臨床試験が開始された。
(forbes.com 原文)