教育

2024.05.31 09:45

英検スコアの上昇が科学的に示された「潜在記憶」学習法とは

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語学学習は単語などを長期記憶することが主体になるが、じつは、テスト前の丸暗記では得られない「潜在記憶」が重要になる。岡山大学が開発した、潜在記憶を養うたった5分間の「覚えない」学習法が、英検スコアを上昇させることがビッグデータ解析により判明した。

長期記憶には、大きく「顕在記憶」と「潜在記憶」に分かれるとされている。顕在記憶は、意識的に思い出そうとして思い出せる記憶のこと。潜在記憶は、車の運転のように無意識に行動に表れる記憶のことを言う。アメリカ人と話すときに自然に英語が出てくる、いわゆる「英語脳」は潜在記憶によるものと考えられる。

岡山大学は、この潜在記憶理論と新しいテスト原理を土台とした新型eラーニング「MSS」(マイクロ・ステップ・スタディー)の研究開発を続けているが、このほど、MSSを導入している神奈川県の柏木学園柏木学園高等学校と共同で、高精度教育ビッグデータからMSSの学習効果を解析。その結果、1日5分間程度のMSSで、英検スコアが有意に上昇することがわかった。英語のeラーニングは数々あるが、英検スコアを向上させるという科学的報告がなされたものは他にない。またベネッセコーポレーションが実施している英語検定「GTEC」でもスコアの上昇が確認された。

MSSでは、提示された英文や訳文を、覚えようとせずに、5分間ほどただ「見流す」。それだけで高い効果が得られると同時に学習負担が大幅に減る。岡山大学の調査で、一夜漬けの顕在記憶では反復するほどテストの成績は上がるが、潜在記憶の場合は1日に6回以上の反復では効果が積み上がらないことがわかっている。つまり、長時間かけて英単語を繰り返し覚えようとするのは、明日のテストには有効でも、英語力という点ではあまり向かないかもしれないということだ。「一生懸命時間をかけて覚えようとしているまじめな子どもほど非効率な学習をしている」と岡山大学大学院教育学研究科附属実践データサイエンスセンターの寺澤孝文教授は言う。

さらにMSSでは、評価方法も個人のデータに基づき、すべての英単語について、いつ学習し、どの程度の期間を空けてテストすれば効果的かを見極めている。一夜漬けではなく「実力として身についた学習成果」の測定と可視化ができるので、それをフィードバックすることで、ほぼすべての学習者の成績が上昇し、学習意欲も高まるという。

20年以上にわたる基礎研究に裏付けされたMSSによって、「現在普及している学習法や記憶の常識が覆されていくことになる」と寺澤教授は話す。従来方法を安易に否定できるものではないが、「今後新たな事実が出てくるのは間違いない」とのことだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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