北米

2024.05.24 08:00

移民を敵視するトランプが「1000人規模の外国人」を雇用する矛盾

Donald Trump poses with the kitchen staff at Mar-a-Lago on 2006.(Photo by Davidoff Studios/Getty Images)

ドナルド・トランプ前米大統領は、移民問題で強硬な姿勢を貫いてはいるものの、自身のビジネスでは数多くの外国人労働者を雇用している。

米労働省が2008年のデータまで遡った分析によると、トランプの事業は2023年に、最近のどの年よりも多くの臨時の外国人労働者を雇用していた。

フロリダ州にあるトランプの別荘、マー・ア・ラゴや2つのゴルフクラブ、ヴァージニア州のワイナリーは昨年、合計170人の外国人労働者の雇用を求めていた。また、トランプによる事業は過去16年間で、少なくとも1670人の一時的な外国人労働者を採用しようとしていたという。

トランプが大統領に就任していた4年間で、彼のビジネスは合計382人の外国人の雇用を計画し、そのうち121人の募集は2018年に行われていた。

トランプは、以前から外国人に対して懐疑的な見方をしており、バラク・オバマがアメリカ人ではないという陰謀論を長年にわたり広め、2016年の大統領選では米国とメキシコの国境に壁を建設するという約束を中心に据えていた。しかし、大統領に就任後の彼の政権は、米国の雇用者が外国人労働者に依存するのを防ごうとはしたが、排除の対象としたのは恒久的な外国人労働者で、トランプの施設も雇用する一時的な外国人労働者ではなかった。

米移民局(USCIS)のガイドラインでは、雇用主が十分な数の米国人を見つけられない場合に、一時的な外国人労働者を雇うことが許可されている。2023年7月にマー・ア・ラゴと、フロリダ州パームビーチで彼が運営するゴルフクラブが一時的な外国人労働者を雇う許可を求めた際、フロリダ州の失業率は2.7%だった。

一時的な外国人労働者を受け入れる米国企業はまず、労働省に申請を行い、承認されれば次に国土安全保障省に対し、特定の仕事を外国人労働者で満たす許可を申請する。米国外からの就労希望者は、その後、米国大使館または領事館で国務省にビザを申請する必要がある。

トランプ・オーガニゼーション(訳注:トランプが所有する事業グループ)は農業労働者のためのH-2Aビザと、非農業労働者のためのH-2Bビザの2種類のビザを利用している。トランプの雇用慣行は、過去に多くの論争を巻き起こしており、ワシントン・ポスト紙は2019年に、彼の所有地で長年にわたり不法に肉体労働をしていた49人の労働者を取材していた。

トランプによる外国人の雇用は、国家安全保障上の懸念も引き起こしている。マー・ア・ラゴは2017年から2022年にかけて380人の短期の外国人労働者を募集したが、その間にトランプは大統領として、機密文書にアクセスしていた。トランプはまた、夏の休暇を過ごすニュージャージー州ベッドミンスターにあるゴルフクラブでも機密文書を保管していたとされるが、そのクラブは2022年に調理人やサーバーとして7人の外国人を募集していた。

トランプは昨年6月、2022年8月にマー・ア・ラゴを家宅捜索した際にFBIが発見したとされる102件を含む、政府文書の保管に関する37件の重罪について無罪を主張した。トランプ・オーガニゼーションの広報担当者はフォーブスのコメントの要請に応じなかった。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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