日立ビルシステムは、「エスカレーターを歩行することの危険性について」というウェブサイトを公開した。ここでは、事故事例をもとにエスカレーターを歩くことがなぜ危険なのか、4つの理由をあげている。また、エスカレーターを歩く場合の輸送効率についても、計算にもとづく詳しい解説があり、歩かないほうがよいことが具体的に示されている。
理由1
段の高さが、建築基準法で定められた階段の高さ(20センチメートル以下)よりも高いこと。なので、歩くとつまづく危険性がある。また踏み外したときの危険度も高く、周囲を巻き込む事故につながりかねない。
理由2
立っている人に荷物が接触する可能性があること。階段の場合は、2人の大人が安全に歩行できる幅が60センチメートル以上とされているが、2人乗りのエスカレーターの幅は通常1メートルほどと狭いので、体や荷物が接触しやすい。
理由3
可動部に巻き込まれる危険があること。歩行中にバランスを崩して転んだりすると、ステップの隙間などに靴や服が巻き込まれて大きな事故につながる危険がある。
理由4
安全装置が作動して急停止する場合があること。なんらかの異常を検知してエスカレーターが自動停止したとき、手すりにつかまっていないとバランスを崩して転ぶ危険がある。
日本エレベーター協会の「エスカレーターにおける利用者災害の調査報告(第9回)」によれば、2018年1月から2019年12月までの2年間でエスカレーターの事故が1550件発生しており、その半数以上の805件が、手すりをもたなかったり、歩行したりして転倒するなどの「乗り方不良」によるものだった。
また同サイトでは、歩く人のために片側空けが輸送効率にどう影響するかを数値で示している。詳しくはサイトを見てほしいが、かいつまんで話せば、計算上は全員が歩いたほうが一定時間内に運べる人数は多くなるものの、立ち止まって乗る人の数(日立ビルシステムの調査では首都圏のエスカレーターで立ち止まって乗る人は65パーセント)を計算に入れると、片側空けより両側に立ち止まるほうが23パーセント輸送効率が高くなるということだ。さらに、混雑時には片側を空けるために歩かないほうに乗りたい人の行列ができてしまうといった弊害もある。
よく言われる、片側乗りでエスカレーターの部品が片側だけ早く摩耗してしまうという心配する人もいるが、耐久性には十分に余裕を持たせた設計なので、そういうことはないそうだ。こうしたエスカレーターの豆知識も同サイトでは楽しめる。
みんなで歩いた方が輸送効率は上がるが、本来は安全なエスカレーターが命がけの乗り物になってしまう。立ち止まる側の手に障害があり、手すりにつかまれない人もいる。片側空けは、そうした人の安全を奪う悪しき習慣とも言える。マナーとは、他人に迷惑をかけないためのもの。片側空けは決してマナーではない。
「エスカレーターを歩行することの危険性について」のサイトはこちら。
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