陸海空3自衛隊を指揮する統合作戦司令部の創設を盛り込んだ防衛省設置法などの改正案が10日の参院本会議で、賛成多数により可決、成立した。同盟国である米軍との関係をより効率化し、連携が深まることが期待される。同時に不安になる問題もある、果たして、自衛隊幹部(自衛隊は将校を幹部と呼ぶ)が米軍将校と互角に渡り合えるのか、という点だ。
統合作戦司令部が創設された場合、統合幕僚長は今後、首相や防衛相などの補佐に専念できる。米軍のカウンターパートは統合参謀本部議長になる。自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令官は今後、米インド太平洋軍司令官がカウンターパートになる。統合作戦司令官は今後、作戦指揮に専念できるため、迅速で臨機応変な対応が可能になると期待されている。
陸上自衛隊東北方面総監を務めた松村五郎元陸将も、統合作戦司令部を肯定的に評価したうえで、「不安もあります」と語る。松村氏は現役時代、多数の日米共同指揮所演習を経験した。そこで、よく問題になったのが、「どの正面に戦力を集中するのか」という問題だった。そして、日本の国土が攻撃されることを前提とした演習では、日米の考えがしばしば食い違った。軍事的合理性と勝利を追求する米軍と日本の国土防衛を至上命題にする自衛隊で、戦力を集中する場所に違いが生じたという。松村氏は「意見が食い違ったとき、自衛隊の幹部たちが、米軍将校と渡り合っていけるような組織を作ることが大事です」と語る。
松村氏が現役時代に見てきた米軍将校たちは皆、若い時代から体力のみならず知力でも自分を磨くことに余念がなかった。部隊勤務が最も忙しくなる30~40代の中隊長・大隊長時代、週末に大学に通って公共政策や国際政治などの修士号を取ることが当たり前になっていた。これは、米軍の社会的地位の高さや規模の大きさが関係している。松村氏は「自衛隊のトップレベルの人材は米軍に負けません。でも、人材の量が違います。将校の社会的地位が高かった旧軍ならいざ知らず、今の自衛隊で統合作戦司令部や統合幕僚監部、陸上総隊、自衛艦隊、航空総隊などに人材を分散させると、政府の方針を理解したうえで、しかも英語で米軍と渡り合える幹部の厚さでどうしても見劣りがします」と語る。
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