国外へと生産拠点を移した中国企業にとって、メキシコには2つの大きな魅力がある。ビジネスをしやすく、巨大な米国市場に近いことだ。最近の数字が物語っている。例えば、今年1〜2月のメキシコの設備投資は2020年の3倍のペースで進んでいる。全てというわけではないが、その多くは中国マネーだ。他にもある。メキシコ工業団地協会によると、外資の製造企業の多くは中国資本で、米国との国境に近いモントレー周辺の団地を2027年まで借り上げている。メキシコの輸出はこの1年間で約6%増加し、2023年にはメキシコが初めて中国を抜いて米国の最大の貿易相手国になった。
生産施設は依然として中国企業が所有しているが、中国国内の工場とは異なり、中国政府の管理下にはない。中国の当局は国内にある工場のようにメキシコでの活動を指図することはできない。可能性は極めて低いが、仮に中国政府がメキシコにある中国企業の工場の所有者に操業しないよう命じたとしても、他の企業が工場を運営するだろう。中国の資本ですでに建設された生産施設は中国ではなくメキシコのもので、雇用と発展の原動力もメキシコが手にすることになる。
関税は中国経済の弱体化に貢献し、メキシコ、そしてベトナムやインドネシア、フィリピン、コロンビアといった発展途上国に恩恵をもたらす一方で、米国が直面している不法移民問題にも役立っているかもしれない。メキシコの経済が良くなれば、自国民だけでなく、南米各地から経済的な理由で北上してきた人々にもチャンスが生まれる。そうしてこれらの人々はさほど米国に行く必要がなくなる。その効果を測定することは不可能であり、米国南部の国境に押し寄せる人々は依然として多い。だが、間接的かつ意図的ではないにせよ、関税はこの面でもいくらか問題を軽減した。
おそらく誰も、特にトランプは6年前、あるいは4年前ですらこのような結果を予見できなかっただろう。関税を課したときのホワイトハウスの狙いからはほど遠い。だが、その影響は現実のものだ。中国の損失は前述の国々、特にメキシコの利益に転じ、米国の消費者の負担増は皆無だ。
(forbes.com 原文)