映画

2024.04.27 12:00

アカデミー賞7冠、クリストファー・ノーラン監督の「稼ぐ力」

『オッペンハイマー』のクリストファー・ノーラン監督(Jeff Kravitz/FilmMagic)

制作は2022年の早い時期から始まり、公開は翌年の7月に決まった。その後、ワーナー・ブラザースが『オッペンハイマー』と同じ日に、ブロックバスターの『バービー』を公開すると発表。ハリウッドにはこれを、ノーランがワーナーと契約しなかったことへの直接的な反応だとみる向きもあった。
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『バービー』で主役を務めたマーゴット・ロビーは、ヴァラエティ誌のビデオシリーズActors on Actorsで『オッペンハイマー』主演のキリアン・マーフィーと対談。同作のプロデューサー、チャールズ・ローヴェンから電話があり、公開日をずらしてもらえないかと頼まれたこと、それに対して次のように答えたことを明かしている。

「私は……日付は変えませんよと言いました」「ぶつかるのが怖いなら、そちらの公開日を変えてくださいと」

そして生まれたのが、「バーベンハイマー(Barbenheimer)」という言葉だった。その「疑似的な対立関係」から、双方のマーケティングチームは世界的な現象を生み出した。2023年に公開された作品の全世界興行収入ランキングでは、『バービー』が1位、『オッペンハイマー』が3位だった。
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7月21日の公開から年末までの『オッペンハイマー』の興行収入は、約9億5700万ドル。このうちおよそ50%が、ノーラン側の収入となる。報酬が巨額にのぼったことは、間違いない(劇場によっては、公開初週の週末3日間は20%となるが、その後は増加する)。

カルト的人気

映画ファンの間でのノーランの影響力は、いまやカルトの域だ。「劇場で鑑賞する体験の神聖さを擁護する人」のようにみられている。ノーランはオッペンハイマーの公開前、IMAX70mmフィルムで撮影したこの作品は、できればIMAX70mmフィルムで上映する劇場で、大画面で(チケットの金額も大きくなるが)見てほしいと呼びかけていた。

『オッペンハイマー』は、IMAXフィルムで撮影された作品のなかでは歴代4位の興行収入を記録した。1億8320万ドルとなり、総額の20%近くを占めている。

そして、同様にノーランは、配信サービスとDVDやブルーレイソフトの発売前にも「不道徳な配信サービスが、家にいるあなたから作品を奪うことがないように」、この映画をブルーレイで所有することが重要だと述べていた。ユニバーサルによると、4Kブルーレイは発売から1週間もしないうちに売り切れたという。

『オッペンハイマー』が商業的にも、作品として高い評価を得たという点で大きな成功を収めたことは、ノーランの次回作を巡る争いがさらに激化するということだ。

ヴァラエティ誌は2023年、ワーナー・ブラザースは2020年に公開した『TENET テネット』に関してノーランと結んだバックエンド契約に基づき、ロイヤルティーとしてノーランに数百万ドルの小切手を送ったと伝えた。

また、2024年2月には、劇場(もちろんIMAX)での『TENET テネット』の上映を期間限定で再開した。ノーランをサポートするためでもあるが、当然、関係修復のための試みであることは間違いない。

ワーナー・ブラザースのマイケル・デ・ルカ共同CEOはヴァラエティ誌に「ノーランを取り戻したい」「可能性はあると思う」と語っている。また、エンターテインメント業界が専門のある弁護士は、ノーランの新作に関する契約について、「何でも彼の希望するとおりになるだろう」とコメントしている。
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forbes.com 原文

編集=木内涼子

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