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2024.03.30 09:15

映画「オッペンハイマー」の理解しやすい観賞法 ノーラン監督の「時間」を操る巧みな演出とは

映画「オッペンハイマー」より(c)Universal Pictures. All Rights Reserved.

映画「オッペンハイマー」が、先のアカデミー賞で計7部門の受賞に輝いたのは耳に新しい。

最も注目されていた作品賞をはじめ、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、編集賞、作曲賞を受賞した。ただ、当初はノミネートされた13部門をすべて総なめにして、アカデミー賞最多受賞の記録を更新するのではないかと言われていたため(過去の最多受賞は11部門)、この結果にやや肩透かしではという見方もあった。

とはいえ、主要賞である作品賞、監督賞を含めての7部門受賞は、本年度のノミネート作品のなかでは最多で(次位は「哀れなるものたち」の4部門)、2023年度を代表する作品となったことは言うまでもない。)

この作品で監督賞を受賞したクリストファー・ノーランは、これまでも「ダンケルク」(2017年)で同部門にノミネートされてはいたが、今回の「オッペンハイマー」で初の監督賞受賞を果たし、これで名実とともに巨匠への道を歩み出した。

時系列をバラした伝記作品

「オッペンハイマー」は、基本的には「原爆の父」とも呼ばれたアメリカの天才物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と失墜を描いた伝記作品だ。

監督のクリストファー・ノーランが得意とする「時間」を操る構成で、多少、作中での時系列は前後するものの、物語の中心となるのは、第二次大戦中にアメリカで原子爆弾の開発を進めた「マンハッタン計画」を主導したオッペンハイマーの数奇な人生だ。
オッペンハイマーは軍の協力のもとニューメキシコ州の砂漠の真ん中に「ロスアラモス研究所」を中心とした科学者の街をつくりあげる(c)Universal Pictures. All Rights Reserved.

作中で描かれるオッペンハイマーの軌跡を、時系列順に直して追うと次のようになる。

1928年、オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、イギリスのケンブリッジ大学で実験物理学を専攻していた。その後、ドイツに渡り、理論物理学専攻に転じる。そこで博士号を取得して母国アメリカに帰国。カリフォルニア大学バークレー校で教鞭を取るようになる。

オッペンハイマーは精神科医のジーン・タトロック(フローレンス・ピュー)と知り合う(c)Universal Pictures. All Rights Reserved.

1936年、精神科医ジーン・タトロック(フローレンス・ピュー)と出会い、恋に落ちる。ジーンは共産党員で、そのことでオッペンハイマーは後々FBIの捜査対象となる。ジーンとの仲は長続きせず、オッペンハイマーは植物学者であるキャサリン(エミリー・ブラント)と知り合い、家庭を築く。



 エミリー・ブラントが演じるオッペンハイマーの妻キャサリン(c)Universal Pictures. All Rights Reserved.

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文=稲垣伸寿

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