中国のスマホ大手「シャオミ」が初のEV発売、年内8万台納車の可能性

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中国のスマートフォン大手シャオミ(小米)の共同創業者のレイ・ジュン(雷軍)は3月28日、同社にとって初めてとなる電気自動車(EV)を発売すると発表した。同社の「SU7」と呼ばれる車両の価格は21万5900元(約450万円)からだ。これにより、シャオミは競争の激しいEV市場に正式に参入した。

推定資産が124億ドルのテック界の大物であるレイは、より高価格な他の2モデルも発表した。ベースモデルのSU7の航続距離は700kmであるのに対し、830kmの航続距離を約束するSU7 Proの価格は3万4000ドル。また、ポルシェのスポーツカー「タイカン」に匹敵する性能を持つとされるSU7 Maxは4万1000ドルで販売される。シャオミは4月末に納車を開始するとレイは述べている。

調査会社86Researchのワン・ハンヤンによると、提供される機能を考慮すると、この価格設定は比較的安価だという。シャオミは価格を抑えてより大きな需要を生み出すことを期待して、利益を犠牲にしているのかもしれない。ワンは、シャオミが年内に8万台を納車する可能性があると予測している。

SU7の販売開始価格3万ドルに基づくと、シャオミは2024年に少なくとも24億ドルの新たな収益を追加できることになる。それに比べ、シャオミの昨年の総売上高は375億ドルで、そのほとんどがスマートフォンとインターネットサービスによるものだった。

レイは以前、シャオミの100億ドル規模のEV製造ベンチャーを「最後の主要スタートアッププロジェクト」と呼んだが、彼は、困難な時期に新たな市場に参入しようとしている。レイが最初に野心を表明してからの3年間で、中国のEV市場は飽和の兆しを見せ始めている。昨年、中国で販売された自動車の3台に1台は新エネルギー車だった。

今年に入り、景気が低迷する中、業界の勢いはさらに弱まった。テスラが始めた価格競争の中でBYDやXpeng(シャオペン)のような競合は軒並み値下げを余儀なくされた。積極的な値引きは利幅を圧迫し、業界トップのBYDですら、2023年最後の四半期の利益が予想を下回った。

中国のSNSユーザーは以前、シャオミが若い消費者を惹きつけるためにEVの価格を10万元(約210万円)以下にすべきだとジョークを言ったが、レイは、同社の車が彼らにとって「少し高い」と思われるかもしれないと答えた。28日のイベントで、レイはシャオミがSU7で儲けを出せないことを認めた。しかし、彼はEV市場へのコミットメントを再確認し「最終的には夢のクルマを作りたい」と語った。

レイはまた、アップルが10年にわたるEV製造の取り組みを中止したことに驚いたと付け加えた。彼は、このような車の製造にコミットし続けるすべての企業は「時代のヒーロー」とみなされるべきだと考えている。

2023年末にシャオミが初めてSU7を公開した時と同様に、中国のハイテク界の大物であるレイは、満員の聴衆を前にスピーチを行った。しかし今回は、Li Auto(理想汽車)の創業者のリー・シャンや、NIO(蔚来汽車)のウィリアム・リー、Xpeng(小鵬汽車)のヒー・シャオペンを含むビリオネア仲間や競争相手も招待し、その過程で与えられたアドバイスに感謝した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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