EV需要が急速に軟化する米国、トヨタのプリウスが人気の理由

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プラグインの電気自動車(EV)が自動車業界を大きく変えようとしているという楽観的な見方がビジネスニュースで多く取り上げられたのはつい昨日のことのように思える。以前はEVの世界販売台数は急増し、2021年に300万台だったのが昨年は1400万台になった。米調査会社S&Pグローバル・モビリティのアナリストらは、この傾向は今後も続き、2030年には米国のEV販売は全体の40%に達する可能性があると予測していた。

今日、EVに関するニュースはより地に足のついた、現実に基づく状況を伝えている。乗用車のEV需要は急速に軟化している。

売れ残った在庫がディーラーの敷地を埋め尽くしている。大手から小さなスタートアップまで、メーカー各社は生産と投資計画を縮小している。アップルは最近、これまでに100億ドル(約1兆4700億円)以上を注いで乗用車をデバイスに変えようとしていたEVプロジェクトを打ち切った

筆者は先月、ピッツバーグ国際オートショーに参加したが、EVが売れなくなっていることは明らかだった。通常出展スペースとなる場所の大部分は小さなEV試乗コースに変わっていた。例年のようなEVの話題は激減していた。

中国の状況はさらに悪い。経済が冷え込む中、EVの需要は軟化し、価格競争が起きている。各メーカーは記録的なペースで生産を続けており、供給過剰となったものが輸出に振り向けられる可能性は、すでに飽和状態にある世界市場にとって脅威となっている。

何が変わったのか

結論から言えば、状況はそう変わっていない。ここ2、3年に行われた数多くの調査では、消費者の30〜40%がEVの購入を真剣に検討していると回答している。だが結局のところドライバーはずっと躊躇していたか、EVに懐疑的だった。

米分析プラットフォームのファースト・インサイトが2022年に行った調査では、ガソリン価格がピークに達し、EVの販売が急増する中、EVの購入を検討すると答えた米国民はわずか14%だった。

現在では、この数字はもっと小さくなっているかもしれない。米国の自動車販売におけるEVのシェアは8%弱だ。

投資家らは自動車を購入する人々についてよく知らないまま、EV業界が車輪のついたソフトウェアを扱うハイテク企業であるかのように、EV業界に多額を賭けた。
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翻訳=溝口慈子

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