小坪:実はriverとしても「被災地支援を企業版ふるさと納税で!」という声の上げ方はしないようにしています。私たちが大事にしたいのは「企業としてできる支援のひとつが企業版ふるさと納税である」という考え方です。そうでないと、寄付することが目的化されてしまい、本質的な課題解決から離れてしまうからです。
クレイ:支援への意識も災害発生直後をピークに徐々に下降していき、その後の風化は避けられないと思います。支援のマインドを継続的に保つにはどうすればいいと思いますか。
小坪:今回、能登半島で支援を行っているNPOの方のお話では、個人の寄付の動きは発災から2~3週間経ち、緊急期から復旧期へとフェーズが移ることで落ち着いてしまう傾向にあり、新しい年度へ移ることでさらに支援への意識は弱まるのでは……と懸念されていました。
私は、企業版ふるさと納税はそういう復旧期や復興期という長いスパンでこそ有効な「ツール」になりうると考えています。単なるお金としてだけではなく、被災地へ思いや、新たなまちづくりのための理念を届けられると思うのです。
今回の地震のケースで見ると、大規模な地殻変動によって海底が隆起してしまい、漁船が泊められなくなってしまった漁港があります。廃港も考えなければいけなくなっている。能登を代表する産業で伝統文化でもある輪島塗や割れた陶器を修復する金継ぎの職人さんたちも、作業場の倒壊や火災で住まいを失い地元を離れる人が出てきている。まちの文化・伝統が絶えかねない、深刻な状況に見舞われています。
輪島塗も金継ぎも、いくつもの作業工程を経て仕上げられるものです。輪島塗の場合は100以上の工程でひとつの漆器が出来上がる。だから職人さんが1人いなくなると作れなくなる、という話は決して大袈裟ではないんです。
クレイ:まず生活を取り戻すことは当然なのですが、その分、文化的なものはどうしても後回しになってしまいますよね。