ただ、東日本大震災のケースとして、現地の惨状を見た人が被災地のためにと手伝いに向かったり、物資が不足しているだろうからすぐに送ろうと動いたりしたことで、かえって被災地に混乱を招いてしまったことがありました。
そこから得た教訓として、まずは被災地支援の専門家の方たちが現地で状況を把握し何が求められているかを整理して、受け入れ態勢が整ってから必要な支援を開始するという流れができています。どうしても一定の時間が必要になるんですね。だからこそ、被災直後の支援策としては寄付という行為が被災地に負担をかけない選択になるのだと思います。
義援金と支援金の違い
クレイ:一般的に思い浮かぶのは、義援金や支援金ですよね。小坪:そうですね。それぞれ簡単にご説明をしますと、まず義援金は義援金を集める団体に寄付をします。日本赤十字社や赤い羽根共同募金、自治体、新聞社・テレビ局が窓口になって寄せられたお金が、被災した方へ公平に分配される仕組みです。ただ、分配までには時間がかかります。被災した県に設置される義援金分配委員会が、亡くなった方やけがを負われた方、全壊、半壊といった家屋が受けた被害など様々な状況を把握した上で、被害ごとに分配額を算出するためです。
一方の支援金は、NPOやボランティア団体が集めるお金です。ピースボート災害支援センターやCivic Force(シビック・フォース)、難民支援も行っているAAR JAPANなどがそういった団体ですが、寄付されたお金はそれぞれの団体が使いみちを考えることになります。
緊急期の支援活動に対応できる/医療分野に強い/物資支援や炊き出しができる、あるいは在宅介護が必要な方やペットなど、被災地で後回しにされてしまう弱者へのケアを行うなど、団体にはそれぞれ得意分野があるんですね。ですから、そういった活動を応援するためのお金という意味合いもあると思います。
「企業版ふるさと納税」で被災地にできること
クレイ:そこで今日の本題の企業版ふるさと納税ですが、どういうことができるのでしょうか。小坪:そのお話をする前に押さえておきたいことがあります。
まず大前提として、企業版ふるさと納税は地域再生法に基づく制度だということです。企業版ふるさと納税を受けるには、必ず地域課題を解決するための事業計画があって、企業からの寄付はそこに紐づけられることになります。
クレイ:寄付を受けた県や市町村は何に使ってもいい、というわけではないということですよね。
小坪:そうです。例えば観光や地元産業の振興、雇用創出、移住・定住を促進するなどの事業計画を掲げて、企業はその事業に賛同するかたちで寄付を行います。
ただ、地震、台風、豪雨などの自然災害で被災した自治体は、復興活動のために災害発生前に進めていた事業計画へ寄付されたお金を活用してもいい、という仕組みがあるんです。気象庁から特別警報が発令されたり、震度6弱以上の地震が発生した場合などが適用の対象です。
企業版ふるさと納税を使って寄付されたお金は自治体への支援金という整理になり、最終的に、地域再生計画に関連付けられる「自治体と協働で活動しているNPOの活動」や「自治体の管理するインフラの復旧・復興」などに使われることになります。