不二高圧コンクリートは、自己治癒コンクリート「バジリスクHA(ヒーリングエージェント)」を使ったコンクリート建築資材の製造と施工を行っている。このたび、熊本県の公共工事に初めて採用され、FTフリュームと呼ばれる水路用の大きなU字型の資材を307本、総延長613メートルが使われることになった。これによるコンクリートの長寿命化で、通常のコンクリートを使った場合と比較して二酸化炭素排出量を28.4トン削減できるという。
バジリスクHAは、オランダのデルフト工科大学で研究されていた技術を、北海道の會澤高圧コンクリートが世界で初めて量産化したコンクリート材料だ。酸素と水に反応するバクテリアと、その餌となるポリ乳酸を混合したもので、それをコンクリートに混ぜて施工する。
自己治癒の原理はこうだ。酸素や水に触れなければバクテリアはコンクリートの中で200年間眠り続けるが、ヒビが入り酸素と水が浸入するとバクテリアは目覚めて活性化する。そして、ポリ乳酸を食べはじめ、炭酸カルシウムと炭酸ガスを排出する。炭酸カルシウムはヒビ割れを埋め、炭酸ガスはコンクリートから溶け出したカルシウムと結合して、さらにヒビ割れを埋める。実験では、人工的に入れたヒビが2週間ほどで塞がれた。
不二高圧コンクリートによれば、コンクリート1トンを生産するときに排出される二酸化炭素量は0.8トン、建築工事全体の排出量の3割にのぼるという。だから、長寿命のコンクリートを使えば脱炭素に大きく貢献できるわけだ。そのほか、メンテナンス工事の費用の大幅削減、受益者負担の軽減が見込まれ、安全性も高いことから「一石二鳥以上です、使わない手はない!」と発注者から評価され、採用となった。
プレスリリース