がんの早期発見からインフルエンザや心疾患の診断に至るまで、AIは、医師の診断スピードと精度を向上させる大きな可能性を秘めています。
医療におけるAI活用のモメンタムをより高めていくことは、医療業界の慢性的な人手不足、高齢化、地域間の医療格差といった課題を解消すると期待がかかります。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。
めざましい速さで進化する人工知能(AI)の活用が、ヘルスケア分野で拡大しています。矢野経済研究所の調査によると、AI搭載型医療機器の数の増加とAIアプリケーションの多様化に伴い、2027年には、国内の診断・診療支援AIシステム市場規模が165億円に拡大すると見込まれています。
この勢いを牽引するのは、医師たちが立ち上げたスタートアップ。ヘルスケア分野における課題を知り尽くした医師起業家たちが、豊富な疾患データや診療ノウハウをAIに学習させることで、医療現場におけるデジタル・トランスフォーメーションを加速させています。
AIを医師の優秀なアシスタントに
がんの早期発見のために使われる消化器内視鏡は、日本メーカーが世界シェアの98%を占め、内視鏡検査の知見とともに日本が世界をリードしています。専門の医師でも10年の経験が必要と言われるほど、内視鏡で撮影した画像からがんを見つけ出す診断は難易度が高いとされる中、こうした医師の技をAIに担わせるべく技術開発が進められています。日本のスタートアップ、AIメディカルサービスは、内視鏡で撮影した胃や大腸の画像を基にがんと疑われる部分を特定し、将来がんに転じる確率を示す、画像診断支援AIを開発しています。
静止画と動画の両方を即座に解析するこのAIは、医師が内視鏡検査を行いながらリアルタイムで病変部位を確認するのを助けます。人による画像診断では、がんの見逃し防止のため、医師は日々何千枚もの画像診断をこなしています。
それでも、早期の胃がんの約20%は見落とされているのが現状です。こうした画像やデータを診断する際の作業負担の軽減と診断精度の向上を目的に開発された同社の内視鏡AIは、画像1枚をわずか0.02秒で分析。4秒かかる専門医による目視の画像分析とは、圧倒的なスピードの差があります。
この内視鏡AIは、全国100以上の医療機関から収集された20万本におよぶ胃などの高解像度動画を基に学習し、約94%の精度でがんの有無を判定することができます。