SADは季節の変わり目、主に冬の間に症状が現れる周期性のうつ病の一種。日が短くなり、自然光を浴びる時間が減ることで、体内で作られる神経伝達物質セロトニンが不足し、睡眠に関わるホルモンであるメラトニンが正常に分泌されなくなった結果、体内時計やホルモンバランスがおかしくなって発症する。若者、女性、高緯度地域に住む人に多いとされ、米国では患者が1000万人を超えるとみられる。
なお、夏にSADを発症する人ははるかに少ないが、皆無ではない。暑い時期が長期化することで冬季うつと同様の症状が出ることがあり、「夏季うつ」と呼ばれる。また、冬型SADを、長期休暇や家族サービスへの期待、育児スケジュールの変更などによるストレスが原因で不安や気分の落ち込みに襲われる「ホリデーブルー」と混同してもならない。SADに伴う抑うつ状態は、日照時間の変化に関連したもので、カレンダー上のイベントに関連したプレッシャーは無関係だ。
SAD対策のカギは、早めに兆候を把握し、秋から冬にかけて先手を打つことだといわれている。一般的なSADの兆候は次の通り。
気分の変化や落ち込み
SADの主要な症状は、特定の季節(一般的に秋~冬)にのみ起こる持続的なもの悲しさ、絶望感、気力の低下で、かんしゃくを起こしやすくなったり落ち着きがなくなったりすることもある。ほとんどの場合、春になると症状は治まる。
睡眠パターンの変化
いつもより長時間寝たり(過眠)、眠れなくなったり(不眠)することが多い。過眠は冬のSADで特によくみられる。
体重の変化
食欲の著しい変化も一般的な症状で、炭水化物や脂肪分を多く含む食品に非常に強烈な食欲を感じ、栄養価の偏った食生活になることが頻繁に報告されている。このため、体重増加は避けられない。
興味の喪失
それまで楽しんでいた活動に興味を失ったり、社会的交流から遠ざかったりする人が多い。冬眠になぞらえて楽天的に構える人もいるが、SADの場合はより深刻で持続的な社会的ひきこもりに発展しないよう注意が必要だ。
無気力
だるさ、疲労感、集中力の低下も、SADの典型的な症状。気力が下がるため集中力、記憶力、決断力に影響が出るという人もいる。
SADに苦しむ全員が毎年これらの症状を経験するわけではない。こうした症状は非常に多くの人にみられるが、SADと診断されるのは季節的なうつ症状のパターンを繰り返している人のみで、たいてい若年成人期に発症する。
SADの症状は深刻で、生活への影響は大きいが、予防・緩和に役立つ戦略はある。秋の早い時期から対策を始めれば、予防にもなる。