音楽を変える“耳栓型ウェアラブル”「Doppler」が20億円の資金調達

耳栓型のウェアラブルデバイスDoppler(Courtesy Doppler Labs)



耳栓型のウェアラブルデバイスDoppler(ドップラー)を開発したDoppler Labsが、シリーズBラウンドで1,700万ドル(約20億円)を調達したことを7月7日発表した。Doppler Labsは、身の回りの環境音を自由に操作できるイヤホン型デバイス「Here Active Listening」で、キックスターターから635,189ドル(約7,600万円)を調達している。このイヤホンは専用のスマートフォン・アプリとBluetoothでつながり、環境に応じて音量を上げ下げしたり、イコライザーを使って効果をかけることができる。

例えば、ユーザーが混雑した喫茶店にいるときは、周囲の雑音を消して音楽を聴きやすくすることが可能だ。Doppler Labsは、特にコンサート会場でこの製品を活用したいと考えている。ユーザーはコンサートに行ったとき、Hereを使うことで、目の前で演奏されている音楽の低音やエコーを増強することができるのだ。

今回の資金調達をリードしたのは、The Chernin Group、Wildcat Capital Management、Acequia Capital。音楽業界からはLive Nation EntertainmentやWME、Universal Music Groupが参加した。

「ライブ音源は、本来的に不完全で、最高品質ではない」とDoppler社のCEO、Noah Kraftは話す。全ての音響の操作は、イヤホンの中で行われる。ユーザーがスマホアプリで予め選択したセッティングに合わせて、デジタルシグナルプロセッサがマイクとスピーカーに処理を加える仕組みだ。イヤホンにはリチウム電池が内蔵されていて、4-6時間の連続使用が可能だ。他にもBluetoothやマイク、スピーカーが搭載されている。

「世界中の企業が、携帯電話やウェアラブル向けのセンサー、半導体、バッテリーの開発に多額の投資をしている。我々は、向こう2年ほどは、自ら投資をせずとも、他社の研究開発の恩恵にあずかることができる」とDopplerの創業者の一人でエグゼクティブ・チェアマンのFritz Lanmanは話す。Dopplerは既にテスト製品の開発を終えており、これを試した記者たちは、このデバイスをかなり気に入ったようだ。

初回出荷分は、キックスターターの出資者限定で、200ドルで販売される。Dopplerは、クラウドファンディング・キャンペーン中に約3,200セットを販売し、出荷は年末頃になるという。今後、一般向けには$250で販売される予定だ。

Dopplerの創業は2013年。映画製作に携わっていたKraftと、Pinterest、Square、Chartbeatなどへのアーリーステージ投資で知られるLanmanの二名が立ち上げた。

Dopplerが最初に開発した製品はDubsという25ドルのイヤホンで、25万個近く売れた。Kraftは「Dubsを作った目的はキャッシュを生み出すことであり、フラッグシップ製品はあくまでHereだ」と話している。「今後は、コンサート会場でのエコーや低音の増強にとどまらず、より進化した音響拡張現実の実現や、同時通訳の領域にも踏み込みたい」としている。

「我々の狙いは、ユーザーの耳にコンピュータを入れて、聴覚を最適化することだ」とKraftは話す。「そこから先、どのような世界が切り開けるかは我々にもわからない」

文=アーロン・ティリー(Forbes)/編集=上田裕資

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