ゴールデンビザ制度は、現地の不動産や金融資産に投資する富裕層に居住許可を取得する機会を与えるもの。オランダのように厳しい要件を設けて不動産投資を除外している国もある一方で、それほど厳格でない国もあり、こうした制度が不動産価格の上昇を助長し、マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税への道を開いているとして強い批判の声が上がっている。特に欧州で最も人気のある都市で起きている不動産問題が論争に拍車を掛け、欧州議会の市民の自由・司法・内務委員会はゴールデンビザ制度を「倫理的、法的、経済的観点から好ましくない」と指摘。また、欧州委員会は加盟国に対し、既存の投資家市民権制度を「直ちに廃止」し、こうした制度がもたらすリスクに対処するための「強力な検査体制を確保するよう要請する」としている。
この問題は、ウクライナとロシアの紛争によって深刻化している。EU本部によれば、富裕な外国人が居住権を「買う」ことができる制度は、その国に住む必要すらない場合もあり、「EUの規範とは相容れないマネーロンダリングや脱税、テロ資金の調達や汚職、組織犯罪の侵入を許し、安全保障上の脅威」となっている。
ユーロニュースが報じたところによると、ベルギー出身のサスキア・ブリクモン欧州議会議員は、ゴールデンビザを「オリガルヒ(訳注:ロシアやウクライナの新興財閥)や犯罪者、汚職政治家」が「欧州への道を買い、自身の資金や印象、身元を洗浄する」ための手段だと批判した。
また、欧州委のディディエ・レインダース司法担当委員は、ゴールデンビザ制度を「違法」と断じ、次のように述べた。「欧州の価値は売り物ではない。『ゴールデンパスポート』による市民権の売買はEU法上違法であり、私たちの安全保障に深刻な脅威をもたらすと考えている。関係するすべての加盟国は、投資家市民権制度を直ちに廃止すべきだ」
ゴールデンビザの廃止に向けて動き出す国が増えるにつれ、買い手は入国を急いでいる。
(forbes.com 原文)