車を持ち続けたいという実態
バルセロナで感じたのは、車があまりに多いことだ。朝と晩の渋滞は特にひどい。日本の総領事公邸で開かれたイベントに参加した神戸市の一行も、乗車したタクシーが渋滞に巻き込まれ遅刻してしまった。
例えば、新市街の碁盤目の各街区の中央には、かつては住民が緑を楽しめる中庭がつくられていた。だが、いまではそれが駐車場に使われていたりするという。そこでバルセロナ市は、その中庭のスペースを買収してまで、樹木を植える取り組みを実施している。
ほかにも、病院や公民館といった公共施設を移転することで、誰もが自宅から徒歩15分以内で公共サービスにアクセスできる街づくりも目指している。もちろん、鉄道やバスなど公共交通の利便性の向上にも抜かりはない。
とはいえ、住民も一枚岩ではない。仕事や家庭の事情で車を手放せない人はいる。そういう人たちにとっては、いままで使っていた駐車場が緑地になれば、別の有料の駐車場を探さざるをえない。
そこで、スーパーブロックを設定する際には、現地に住む人たちの意見を聴いて、住民からの合意も得ているという。
ところが、そこにも課題がある。住民たちが集まって意見交換をするのだが、参加するのは仕事を引退した高齢の人たちばかりなのだそうだ。若者たちが地域の問題に関心を持ちにくいのは、日本と変わらないようだ。

確かにいまは「スーパーブロック」という言葉が1人歩きしているかもしれない。しかし、車社会からの脱却を目指すバルセロナの都市戦略の一端と理解すれば、彼ら彼女らの言うとおりだ。
ここまで私たちがバルセロナ市役所の担当者から本音の話を聞けたのには理由がある。

スーパーブロックの視察をしたかったのは神戸市だけではない。この国際展示会に参加した各国の政府や自治体はみなそう思っただろう。

バルセロナが進める車社会から脱却し、人を街の主役にしようという考え方は、これからの日本でも大きな流れになっていくことだろう。先進事例の実情をつぶさに把握した神戸市の今後の動きにも注目が集まりそうだ。